まだプログラマーですが何か?

プログラマーネタ中心。たまに作成したウェブサービス関連の話も https://twitter.com/dotnsf

タグ:lotusscript

ベータ2が公開されたばかりの IBM Notes(以下「ノーツ」)V10 の、個人的に待望だった新機能「LotusScript で HTTP リクエスト」を早速試してみました。


1989 年(平成元年!)にバージョン1がリリースされたノーツはメールやインターネットの標準機能を取り込みながら進化してきました。特徴の1つでもあるマクロ言語の機能も簡易的な@関数式から VBA 互換の LotusScript 、Java 、そして JavaScript と時代に即して対応範囲を広げてきました。

ただ、ここ数年のカスタマイズの中で不便に感じることも出てきました。それが(この下で紹介する新機能でもある)HTTP リクエスト機能です。各種 REST API などと連携しようとすると HTTP リクエストを実行して、その結果を受け取って・・という一連の処理が必要になります。

ノーツで HTTP リクエストを実行できなかったわけではありません。ノーツは JVM を内蔵しており、Java で(エージェントと呼ばれる)マクロを記述して実行することができます。この方法を使うことで(つまり Java のネットワーク機能を使うことで)HTTP リクエストを実行することはこれまでも可能でした。

一方で制限事項もありました。ノーツの Java エージェントはバックエンド機能として提供されており、そのフロントエンド機能は提供されていませんでした。具体的にいうと「編集中の(未保存の)画面の Subject フィールドの値を取り出して、その値をパラメータとして HTTP リクエストを実行」といった処理をしようとすると、青字部分は Java を使えばいいのですが、赤字の部分の処理は Java からは実行できないのでした。これを実現するために例えば LotusScript のフロントエンド機能を使って赤字部分の処理を実行し、そこで取り出した値を(ファイル渡しなどの)何らかの方法でバックエンドの Java に渡して処理させる、という連携が必要でした。なので、技術的に不可能でなかったのですが、2つの言語記述による処理を連携させる必要があり、ちと面倒だったのでした。

今回リリースされた V10 ベータ2の新機能「LotusScript から HTTP リクエスト」はこの制約を取り除くことができると思っています。具体的にはフロントエンドの LotusScript で編集中の値を取り出して、そのままバックエンドの LotusScript で HTTP リクエストを実行することができるようになる、というものです。全てが LotusScript の1処理で完結することになり、自然に実装することができるようになると期待していました。その機能を使ってみたので以下で紹介します:



まずはノーツ V10 をインストールします、about 画面はこんな感じです:
20180821


で、肝心の HTTP リクエストは・・・どうやって使うんだろ?? (^^; ベータ版だからなのか、全くドキュメントが見つかりません。。。

それっぽいキーワードでぐぐって、唯一なんとか見つけたのがこの PDF ・・・
http://collabsphere.org/ug/collabsphere2018.nsf/0/789F066AA1414139862582A900620D93/$File/CollabSphere2018%20-%20Elementary.pdf

2018082105
 ↑NotesSession から createHttpRequest() して・・・ってこと?

これ、どこまで信用できる情報かわからないし、情報は充分ではないけれど、今はこれを信じて使ってみることにします。まずは超シンプルに僕が IBM Cloud 上に作った「リアルタイム外為情報」 API をそのまま HTTP GET で呼んでみることにします:
2018082105
 ↑HTTP GET されたら、こんな JSON を返すだけの API


上記 PDF の内容に従って、NotesSession のインスタンスから createHTTPRequest() して NotesHTTPRequest のセッションを生成し、URL を指定して HTTP GET 、その結果を MsgBox でそのまま出力、という内容です。なお PDF に記述されていた Use "class.RemoteHTTP" という宣言をするとエラーになってしまうため使っていません:
2018082103

Sub Click(Source As Button)
  Dim session As New NotesSession
  Dim http As NotesHTTPRequest
	
  url = "http://fx.mybluemix.net/"
	
  Set http = session.CreateHTTPRequest()
  response = http.Get( url )
  Msgbox response
End Sub

実行したら・・・  動いた!!
2018082104


ついに LotusScript だけで HTTP GET Request が動いた瞬間です。わーい、結果は HTTP レスポンスヘッダを含むテキストになってるわけね、ふむふむ。。

あ、よく見るとリクエスト先 URL のプロトコルが "https" ではなく、"http" になっていたので、もう一度 "https" にしてやり直し:
2018082101

Sub Click(Source As Button)
  Dim session As New NotesSession
  Dim http As NotesHTTPRequest
	
  url = "https://fx.mybluemix.net/"
	
  Set http = session.CreateHTTPRequest()
  response = http.Get( url )
  Msgbox response
End Sub


・・・したらエラー(苦笑):
2018082102


なんだ、このエラーは (^^; ベータ版だからなのだろうか?それとも回避手順がある?? あと HTTP GET はいいんだけど、HTTP POST がよくわかりません。http.Post( url, content ) らしいんだけど、content をどう書けばいいんだろ??それから認証が必要な場合は・・・


まだ情報不足もあって調べられることに限界がありますが、一方で LotusScript のみで REST API が実行できそうだ、という感触も得ることができました。これでドキュメントが揃ってくればノーツからの Watson API 連携ももっと楽にできるようになるかな。。


久しぶりの LotusScript ネタです。LotusScript は IBM ノーツ/ドミノのカスタマイズに使えるマクロ言語です。内容そのものはノーツじゃなくても(VBA でエクセルなどにも)応用できると思いますが、Windows 前提です。

Windows OS に標準搭載されている ServerXMLHTTP オブジェクトをノーツの LotusScript から使って、LotusScript で WEB API っぽいことを実現してみました。

まず ServerXMLHTTP オブジェクトについて。MSDN によるとこんなものです:
https://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/ms762278(v=vs.85).aspx

簡単に言えば「HTTP クライアントライブラリとして使える ActiveX オブジェクト」です。このオブジェクトをインスタンス化すれば、比較的簡単に HTTP クライアントプログラムが作れます。特にノーツのマクロ言語である LotusScript はソケット通信とかネットワークプログラミングに若干弱いところがあるので、このオブジェクトを外部利用して WEB API を使ってみよう、という試みです。

例えばこんな感じ。開発環境であるドミノデザイナーを使ってノーツデータベースのエージェントを LotusScript で作り、Initialize サブルーチンに以下のような内容を記載します(エージェント名は ServerXMLHTTP としました):
Sub Initialize
  Dim obj As Variant

  Set obj = CreateObject( "Msxml2.ServerXMLHTTP.6.0" )
  Call obj.open( "GET", "http://ibm.com/", False )
  Call obj.send()
  MsgBox obj.responseText
End Sub

内容がシンプルなのでなんとなく理解できると思いますが、簡単に解説すると CreateObject を使って ServerXMLHTTP オブジェクトインタンスを生成し、"http://ibm.com/" を HTTP GET して、その内容をメッセージボックスで表示する、というものです。要するに http://ibm.com/ の HTML ソースコードを画面に表示する、というものです。

またエージェントのプロパティとして、実行時のトリガーは「イベント」で「アクションメニューの選択」、対象は「データベースの全ての文書」に設定しておきます。もちろん実行内容によってはここを変更する必要がでてきますが、今回の例ではこの設定でメニューから選択して実行できるようにしました:
2017081001


改めてこのデータベースをノーツで開くと、メニューから作成したエージェント(図では "ServerXMLHTTP")が選択できるようになっているはずです。これを選択して実行すると・・・
2017081002


こんな感じのダイアログボックスが表示され、中に http://ibm.com/ の HTML ソースコードが表示されているはずです:
2017081003


いかがでしょう。上記例では HTTP GET の例を紹介しましたが、この ServerXMLHTTP オブジェクトを使うと、POST など他のメソッドを指定することもできるし、もちろん送信データを指定することもできます。その辺りの詳しい話は公式ドキュメントを参照ください:
https://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/ms762278(v=vs.85).aspx


HTTP クライアントがここまで簡単に使えると、各種 Web API が使えるようになるので、IBM Bluemix のワトソン API をノーツクライアントから(それもフロントエンドから)直接実行する、なんてことも可能になると思っています(余談ですが以前に Java を使って、ノーツのバックエンドからワトソン API を使う、という内容を紹介したことがあります。その記事はこちら)。


ノーツデータを広く応用・活用する際に使えそうなライブラリです。

このページのトップヘ