まだプログラマーですが何か?

プログラマーネタ中心。たまに作成したウェブサービス関連の話も https://twitter.com/dotnsf

タグ:hyperledger

ラズベリーパイネタシリーズです。

今回はオープンソースのブロックチェーン基盤である Hyperledger Fabric を一通り Raspbian OS に導入して実行する手順を紹介します。まあラズパイの 1GB 物理メモリでどこまで実用的に動くか、というのはあまり期待できないし、また現時点では Hyperledger Fabric はともかく、Hyperledger Composer を使った動作は 32bit OS である Raspbian OS ではどうやら難しいのかもしれない・・・と感じていることを最初に申し上げておきます。 なお以下で紹介する手順はこの環境で確認しています:

モデル: Raspberry Pi 3B+
OS: Raspbian 2018-11-13 (Stretch Full) ※最新版はこちら
SD カード: 128GB

※ページ最下の【参考】でも参照しているリンク先では Docker Swarm 環境で3台のラズパイを使った Hyperledger Fabric 環境構築を紹介しています。実用面ではこちらのほうが現実的かもしれません。



【導入手順】
基本方針として、このブログエントリ最下段の【参考】で記した2つのページの情報をあわせた方法で導入しています。

おおまかには以下の順序で Hyperledger Fabric 環境を構築します:
0. 事前準備
1. Docker 導入
2. Docker Compose 導入
3. Docker Image ダウンロード
4. 起動


今回は1台のラズパイの中に Docker 環境を構築し、その Docker の中で各種 Hyperledger Fabric のイメージを1インスタンスずつ動かして環境構築します。そのため上記のような順序でインストールする必要があります。


【0. 事前準備】
今回 Hyperledger Fabric を Docker 上で動かします。そのためラズパイに Docker 等を導入することになるのですが、そのための前提ライブラリ等を用意しておきます。ラズパイのターミナル等を開いて、以下のコマンドを順次実行します:
リポジトリ更新
$ sudo apt-get update && sudo apt-get upgrade -y

依存ライブラリを導入
$ sudo apt-get install git curl gcc libc6-dev libltdl3-dev python-setuptools -y

python pip インストーラーを更新
$ sudo -H pip install pip --upgrade

ここまでの操作が完了すると、ラズパイ用の Docker がインストールできるようになります。


【1. Docker 導入】

上記に続いて以下のコマンドを実行します:
Docker 導入
$ curl -sSL get.docker.com | sh

Docker の実行権限設定
$ sudo usermod -aG docker pi

ここまで完了したら一度ログアウトし、再度ログインします(最後の実行権限設定が有効になります)。ここまで正しく実行できていると、sudo なしで docker コマンドを実行することができるようになっているはずです:
Docker バージョン確認
$ docker -v
↑ Docker のバージョンが表示されれば、ここまでの手順は完了です。


【2. Docker Compose 導入】

引き続き Docker Compose を導入します。こちらは pip を使って導入し、導入後はすぐにコマンドを実行することが可能です:
Docker Compose 導入
$ sudo pip install docker-compose

Docker Compose バージョン確認
$ docker-compose -v
↑ Docker Compose のバージョンが表示されれば、ここまでの手順は完了です。


【3. Docker イメージダウンロード】

こちらのサイトで提供されている、ラズパイ用にビルド済みの Hyperledger Fabric (v1.0.7) の Docker イメージ群を docker pull コマンドでダウンロードします:
$ docker pull jmotacek/fabric-baseos:armv7l-0.3.2

$ docker pull jmotacek/fabric-basejvm:armv7l-0.3.2

$ docker pull jmotacek/fabric-baseimage:armv7l-0.3.2

$ docker pull jmotacek/fabric-ccenv:armv7l-1.0.7

$ docker pull jmotacek/fabric-javaenv:armv7l-1.0.7

$ docker pull jmotacek/fabric-peer:armv7l-1.0.7

$ docker pull jmotacek/fabric-orderer:armv7l-1.0.7

$ docker pull jmotacek/fabric-buildenv:armv7l-1.0.7

$ docker pull jmotacek/fabric-testenv:armv7l-1.0.7

$ docker pull jmotacek/fabric-zookeeper:armv7l-1.0.7

$ docker pull jmotacek/fabric-kafka:armv7l-1.0.7

$ docker pull jmotacek/fabric-couchdb:armv7l-1.0.7

$ docker pull jmotacek/fabric-tools:armv7l-1.0.7

自分でビルドする方法もあるようなのですが、あまりに面倒そうなので出来合いのものを使わせていただきました。 jmotacek 様、ありがとうございます。


これで Hyperledger Fabric 環境を動かすために必要な準備が完了しました。


【4. 起動】
Hyperledger Fabric の準備が整ったので起動します。ラズパイ1台で(物理メモリ 1GB で)この環境を起動するのは、できるか/できないかで言えばできそうですが、実用には厳しいかもしれません。環境に応じてスワップメモリを増やしておきましょう。方法はこちらを参照ください(私自身はスワップを 2GB に設定して以下を実行しました)。

Hyperledger Fabric の起動スクリプトの元となるキット(通称「サポートツール」)をダウンロード&展開します。以下の例ではホームディレクトリ以下に fabric/ というフォルダを作り、その中に展開しています:
$ mkdir ~/fabric

$ cd ~/fabric

$ curl -O https://raw.githubusercontent.com/hyperledger/composer-tools/master/packages/fabric-dev-servers/fabric-dev-servers.zip

$ unzip fabric-dev-servers.zip

この中の docker-compose.yml ファイルを上記で用意したラズパイ向け Docker イメージ用に書き換えます。具体的には ~/fabric/fabric-scripts/hlfv12/composer/docker-compose.yml を以下のように編集しました(変更部分をにしています):
version: '2'

services:
#  ca.org1.example.com:
#    image: jmotacek/fabric-ca:armv7l-1.0.7
#    environment:
#      - FABRIC_CA_HOME=/etc/hyperledger/fabric-ca-server
#      - FABRIC_CA_SERVER_CA_NAME=ca.org1.example.com
#
#    ports:
#      - "7054:7054"
#    command: sh -c 'fabric-ca-server start --ca.certfile /etc/hyperledger/fabric-ca-server-config/ca.org1.example.com-cert.pem --ca.keyfile /etc/hyperledger/fabric-ca-server-config/19ab65abbb04807dad12e4c0a9aaa6649e70868e3abd0217a322d89e47e1a6ae_sk -b admin:adminpw -d'
#    volumes:
#      - ./crypto-config/peerOrganizations/org1.example.com/ca/:/etc/hyperledger/fabric-ca-server-config
#    container_name: ca.org1.example.com
#
  orderer.example.com:
    container_name: orderer.example.com
    image: jmotacek/fabric-orderer:armv7l-1.0.7
    environment:
      - ORDERER_GENERAL_LOGLEVEL=debug
      - ORDERER_GENERAL_LISTENADDRESS=0.0.0.0
      - ORDERER_GENERAL_GENESISMETHOD=file
      - ORDERER_GENERAL_GENESISFILE=/etc/hyperledger/configtx/composer-genesis.block
      - ORDERER_GENERAL_LOCALMSPID=OrdererMSP
      - ORDERER_GENERAL_LOCALMSPDIR=/etc/hyperledger/msp/orderer/msp
    working_dir: /opt/gopath/src/github.com/hyperledger/fabric
    command: orderer
    ports:
      - 7050:7050
    volumes:
        - ./:/etc/hyperledger/configtx
        - ./crypto-config/ordererOrganizations/example.com/orderers/orderer.example.com/msp:/etc/hyperledger/msp/orderer/msp

  peer0.org1.example.com:
    container_name: peer0.org1.example.com
    image: jmotacek/fabric-peer:armv7l-1.0.7
    environment:
      - CORE_LOGGING_LEVEL=debug
      - CORE_CHAINCODE_LOGGING_LEVEL=DEBUG
      - CORE_VM_ENDPOINT=unix:///host/var/run/docker.sock
      - CORE_PEER_ID=peer0.org1.example.com
      - CORE_PEER_ADDRESS=peer0.org1.example.com:7051
      - CORE_VM_DOCKER_HOSTCONFIG_NETWORKMODE=composer_default
      - CORE_PEER_LOCALMSPID=Org1MSP
      - CORE_PEER_MSPCONFIGPATH=/etc/hyperledger/peer/msp
      - CORE_LEDGER_STATE_STATEDATABASE=CouchDB
      - CORE_LEDGER_STATE_COUCHDBCONFIG_COUCHDBADDRESS=couchdb:5984
    working_dir: /opt/gopath/src/github.com/hyperledger/fabric
    command: peer node start
    ports:
      - 7051:7051
      - 7053:7053
    volumes:
        - /var/run/:/host/var/run/
        - ./:/etc/hyperledger/configtx
        - ./crypto-config/peerOrganizations/org1.example.com/peers/peer0.org1.example.com/msp:/etc/hyperledger/peer/msp
        - ./crypto-config/peerOrganizations/org1.example.com/users:/etc/hyperledger/msp/users
    depends_on:
      - orderer.example.com
      - couchdb

  couchdb:
    container_name: couchdb
    image: jmotacek/fabric-couchdb:armv7l-1.0.7
    ports:
      - 5984:5984
    environment:
      DB_URL: http://localhost:5984/member_db

そして起動コマンドを実行します:
$ cd ~/fabric

$ ./startFabric.sh

↓こんな感じで Docker 内でイメージがコンテナ化され、実行されていきます:
2019011003


少し時間がかかりますが(1分くらい?)コマンドが完了すると、こんな画面になってプロンプトが戻ります:
2019011004


以下のコマンドで起動中のコンテナの状態を確認し、Hyperledger Fabric の各種コンテナが実行されていることを確認します:
$ docker ps

↓docker-compose.yml で指定されたイメージが起動していることが確認できます。Hyperledger Fabric の起動に成功しました!:
2019011002


ちなみに、この「Hyperledger Fabric が起動しただけ」の段階で使用メモリを確認してみました。起動しただけであれば意外と余裕あるようにも見えますね・・・
2019011006



【(途中まで)使ってみる】
Hyperledger Fabric の導入と起動までであれば上記までで完了していますが、せっかくなのでこの環境を使ってみることにします(といっても、以下で紹介しているのはカードファイルのインポートまでですが・・)。

具体的には「サポートツールで提供されているスクリプトを使って管理者用のカードファイルを作成する」ところまでを紹介します。といってもここから先はラズパイ特有の部分はなく、通常の方法と一緒というか、通常と同じ方法でできる所までを紹介する、というスタンスです。

そのために composer コマンドと呼ばれる、Hyperledger Composer のコマンドラインツールを導入するのですが、その前提として Node.js v8.x 環境(node と npm)が必要になります。ここがちとややこしいのですが、今回の導入に使った Raspbian OS 2018-11-13 (Stretch Full) でははじめから V8 の node コマンドは使えるようになっていますが、npm が導入されていません。というわけで今後のことも考えて node のバージョン管理ツール(n package)と合わせて Node.js v8.x を導入しておくことにします:
一旦 npm を導入
$ sudo apt-get install npm

キャッシュを更新
$ sudo npm cache clean

n package をインストール
$ sudo npm install n -g

n package で導入できる Node.js のバージョン(8.xx.xx の最新バージョン)を確認
$ sudo n list

(8.xx.xx の中では 8.15.0 が最新であったと仮定)
Node.js V8.15.0 を指定してインストール $ sudo n 8.15.0

一度ログアウト&ログインし直して、改めて node コマンドと npm コマンドのバージョンを確認します:
$ node -v
v8.15.0

$ npm -v
6.4.1
↑ Node.js V8.x と対応する npm が導入できたことを確認


Node.js 環境が整ったので、改めて composer コマンドをインストールします。今回用意した Hyperledger Fabric のバージョンが v1.0.7 のイメージなので、このバージョンに合う composer-cli v0.16 を指定してインストールします(※):
$ sudo npm install --unsafe-perm -g composer-cli@0.16

※ラズパイ環境だからかもしれませんが、上記の --unsafe-perm オプションを付けないと実行結果がエラーになってしまうようでした。こちらを参照。


そしてサポートツール内の createPeerAdminCard.sh を実行して、PeerAdmin@hlfv1 のカードを作成します:
$ cd ~/fabric/fabric-scripts/hlfv1

$ ./createPeerAdminCard.sh

composer のコマンドで、PeerAdmin@hlfv1 カードが作成されていることを確認します:
$ composer card list
2019011101


とりあえず動作確認できたのはここまでです。2019/01/11 時点でこの先に進もうとして BNA ファイルを用意して composer runtime install し(ここまでは成功)、composer network start させようとすると、以下のようなエラーになりました:
Error: Error trying to instantiate composer runtime. Error: No valid responses from any peers.
Response from attempted peer comms was an error: Error: Error starting container: API error (400): {"message":"Minimum memory limit allowed is 4MB"}
2019011102


このエラーの原因がまだわかっていないのですが、調べた範囲ではもしかすると 32bit OS である Raspbian OS に原因があるような気もしていて、そうだとすると現時点で Hyperledger Composer のこの先を動かすのは厳しいのかなあ・・・ とも思っています。

この辺りは引き続き調査もしますが、情報求む(苦笑)。


【Hyperledger Fabric を終了する】
起動した Hyperledger Fabric を終了するには startFabric.sh と同じフォルダにある stopFabric.sh を実行します:
$ ./stopFabric.sh

↓終了できました:
2019011005



実メモリ 1GB の制約はどうにもならないので実用的な使い方は難しいかもしれませんが、とりあえず1台のラズパイで Hyperledger Fabric が起動できることは確認できました。CouchDB などを使わずに、既存のビジネスネットワークに Peer だけ動かして接続するような使い方であればもう少し余裕を持って使えるかもしれません。


秋葉原の最安値で済ませることができれば、
 本体 5000 円 + ケース 1000 円 + Micro SDカード 2000 円
8000 円程度で Hyperledger Fabric のブロックチェーン環境が一台確保できる、ということになりますね。安っ!


【参考】
https://stackoverflow.com/questions/45800167/hyperledger-fabric-on-raspberry-pi-3
https://www.joemotacek.com/hyperledger-fabric-v1-0-on-a-raspberry-pi-docker-swarm-part-2/

Hyperledger Composer Playground はオープンソースのブロックチェーン環境である Hyperleger Fabric 上で稼働させるビジネスネットワークを新たに定義したり、編集したり、テストしたり、デプロイする時に便利な GUI を提供するツールです。ウェブ上の公開サービスを使うこともできますが、ローカル環境に導入して、自分専用の環境を構築することもできます。その後者の手順を紹介します。


まず導入先の環境に Hyperledger Fabric を導入しておく必要があります。その手順はこちらを参照してください:
Hyperledger Fabric & Composer 環境の導入手順(2018/2月版)

Hyperledger Fabric が導入された環境の上に Hyperledger Composer Playground を導入します。その手順は以下のコマンド一発だけです:
$ sudo npm install -g composer-playground

導入後に Hyperledger Composer Playground を起動する場合は以下のコマンドを入力します:
$ composer-playground

デフォルトでは 8080 番ポートで Hyperledger Composer Playground が起動します。ウェブブラウザで以下の URL にアクセスします:
http://xx.xx.xx.xx:8080/  (xx.xx.xx.xx は Hyperledger Composer Playground を導入したマシンのサーバー名または IP アドレス)

すると以下のような画面になり、Hyperledger Composer Playground が使えるようになります(ここから先はオンライン版とほぼ同じ):
2018021201


"Let's Blockchain" ボタンをクリックすると、登録済みビジネスネットワークの一覧が表示されます:
2018021202


オンライン版を使うのもアリだとは思いますが、内容のリセットをかけたり、ビジネスネットワークカードを作成したりインポートしたり、といった管理者にしかできない作業も体験できるのがローカル環境に導入した場合のメリットです。


オープンソースのブロックチェーン環境である Hyperledger Fabric と、その開発ツールである Composer の環境を手元のマシンに導入する手順を紹介します。基本手順は以前に IDCF テックブログに寄稿させていただいた内容と同じですが、各モジュールのバージョンや導入直後のカード作成の部分が異なっているので、補足する形で紹介します。

前提条件

まず、以下の説明では前提プラットフォームとして Ubuntu 16.04 を使います。ここに Docker, Docker-Compose, Node.js V6.x を導入してから Hyperledger Fabric をインストールしていくのですが、この3つ(Docker, Docker-Compose, Node.js V6.x)が導入されていれば macOS でも可能です(macOS でのこれら3つの導入手順は省略させてください、普通にググれば見つかると思うので・・・)。以下はこれら3つが導入されている前提で、それ以降の手順を紹介します(Ubuntu でも macOS でも手順は同じです)。

というわけで、この時点では以下の3つのモジュールが導入されているものとします(バージョンは 2018/02 時点で手順に沿って実施した場合に入るバージョンでした):
 - Docker 17.12.0-ce
 - Docker-Compose 1.12.0
 - Node.js v6.12.3

ここまでの導入手順については、こちらを参照ください:
Hyperledger Fabric でブロックチェーン環境を構築


Hyperledger Composer コマンドラインインターフェース

前提環境を整える時に導入されている npm コマンドを使って、Hyperledger Composer のコマンドラインインターフェース(composer-cli)をインストールします:
$ sudo npm install -g composer-cli

(↓2018/03/27 追記)
以下の PeerAdmin@hlfv1 カードを作成する際の仕様が変わったため、ここでは composer-cli のバージョン v0.16.3 を指定してインストールする必要があります。したがって以下のコマンドを実行してください:
$ sudo npm install -g composer-cli@0.16.3
(↑2018/03/27 追記)


導入に成功すると composer コマンドが使えるようになります。2018/02 時点でのバージョンは 0.16.3 でした:
$ composer
v0.16.3

Hyperledger Fabric 開発環境サポートツール

「サポートツール」と呼ばれるファイル群を使って、開発環境として使える Hyperledger Fabric を導入します。一般的にブロックチェーンでは「分散台帳」と呼ばれる方式でデータを複数のノードに分散して共有する仕組みを取りますが、開発環境では1ノードのみ使います。

まず、この時点で docker サービスが有効になっている必要があります。docker サービスが停止している場合は、このタイミングで起動しておきます:
$ sudo service docker start

改めてサポートツールを使って Hyperledger Fabric 環境を導入します。以下の例では ~/fabric というフォルダを作って、その下にサポートツールを導入しています:
$ cd
$ mkdir fabric  (ホームディレクトリ配下の ~/fabric/ にサポートツールを導入する場合)
$ cd fabric
$ curl -O https://raw.githubusercontent.com/hyperledger/composer-tools/master/packages/fabric-dev-servers/fabric-dev-servers.zip
$ unzip fabric-dev-servers.zip

「サポートツールの導入」といっても実質「zip ファイルの展開」です。展開ファイルを確認します:
$ ls
_loader.sh                downloadFabric.sh       startFabric.sh
composer-logs             fabric-dev-servers.zip  stopFabric.sh
createComposerProfile.sh  fabric-scripts          teardownAllDocker.sh
createPeerAdminCard.sh    package.json            teardownFabric.sh

2018/02 版では以前に紹介した時よりもファイルが増えています。これは Hyperledger Composer の仕様変更に伴うもので、以前にはなかった createPeerAdminCard.sh などは環境準備後に使うことになります。

では展開したサポートツールを使って Hyperledger Fabric 環境を構築します。といってもコマンドはこれひとつです:
$ ./downloadFabric.sh

このコマンドの中で必要とされる docker イメージのダウンロード等が行われ、Hyperledger Fabric 環境がローカルマシン内に構築されます。

コマンドが終了したら、いったんこの時点で docker コンテナのプロセスを確認します。他の用途で docker を使っていたりしない限り、この時点では docker コンテナのプロセスは1つも動いていないはずです:
$ docker ps
CONTAINER ID        IMAGE               COMMAND             CREATED             STATUS              PORTS               NAMES

Hyperledger Fabric 環境の起動

ではローカルマシンに導入した Hyperledger Fabric 環境を起動します。これもコマンド1つです:
$ ./startFabric.sh

このコマンドが完了すると Hyperledger Fabric が起動したことになります。改めて docker コンテナのプロセスを確認すると、先程まで空だったコンテナプロセスがいくつか動いていることが確認できるはずです:
$ docker ps
CONTAINER ID        IMAGE               COMMAND             
6eb73fa9bc26        dev-peer0.org....   "chaincode -peer.a..."   
3ce2ff860034        hyperledger/f....   "peer node start -..."
e99420efba7f        hyperledger/f....   "orderer"
0dc1e0deaa92        hyperledger/f....   "sh -c 'fabric-ca-..."
c6bc1fe8a3f8        hyperledger/f....   "tini -- /docker-e..."

なお、起動中の Hyperledger Fabric を停止する場合は ./stopFabric.sh を実行します(以下の作業を続けるのであれば、しなくてもいいです):
$ ./stopFabric.sh


カードファイルの作成

ここからは以前の情報にはなかった、新しい仕様に関わる新しい箇所です。2018/02 時点では Hyperledger Fabric に接続する際に「カードファイル」と呼ばれる仕組みを使ってアクセスを行う必要があります(以前は「プロファイル」と呼ばれる仕組みを使った方法が用いられていました)。

作成&起動した Hyperledger Fabric 環境についてもカードファイルを使わないとアクセスしたり、操作することができません。まずはローカル環境(hlfv1)のデフォルト管理者となる PeerAdmin 用のカードファイルを作成します。サポートツールに含まれる以下のスクリプトを実行します:
$ ./createPeerAdminCard.sh

色々動いて、最後に "Command succeeded" と表示されれば成功で、/tmp/PeerAdmin@hlfv1.card というファイルが作られているので、このファイルを手元に(例えばホームディレクトリに)保存しておきます:
$ cp /tmp/PeerAdmin@hlfv1.card .

同時に、この時点で PeerAdmin@hlfv1 カードは有効に登録されています。登録済みのカードを一覧表示するには以下のコマンドを実行します:
$ composer card list

The following Business Network Cards are available:

Connection Profile: hlfv1
+--------------------+-----------+------------------+
| Card Name          | UserId    | Business Network |
+--------------------+-----------+------------------+
| PeerAdmin@hlfv1    | PeerAdmin |                  |
+--------------------+-----------+------------------+


Issue composer card list --name  to get details a specific card

Command succeeded


 ↑PeerAdmin@hlfv1 が確認できました。




・・・というわけで、2018/02 時点での仕様に合わせた Hyperledger Fabric & Composer 環境の構築手順と、カードファイルの準備手順までを紹介しました。ここまでできていると、composer コマンドとカードファイルを使ってビジネスネットワークを定義したり、起動したり、、、といったことができるようになります。そのための準備作業という意味合いでの紹介でした。


これらのエントリの続きです:
アリババクラウドを使う(使おうとしてみた)
アリババクラウドのインスタンスを作ってみた


↑前回までの作業でアリババクラウドの青島データセンター内に Ubuntu サーバーを立てることができました。このサーバーインスタンスを使って色々試したかったことをやってみたいと思います。

まずはお約束として、拙作マンホールマップを使ってみたいと思います。残念ながら GUI を用意していないので、curl コマンドを使ってマンホールマップ API を呼んでみます。まずは普通に「中国」を 10 件検索してみます:
$ curl 'http://manholemap.juge.me/searchkeyword?keyword=中国&limit=10'

2018020704


動きました!「中国」というキーワードで検索ヒットしたマンホール情報の一覧から最初の10件が XML で取得できました。

では同様にして中国国内から「天安門」を検索してみます(他意はありません):
$ curl 'http://manholemap.juge.me/searchkeyword?keyword=天安門&limit=10'

2018020705



ゼロ件! えっ!?もしかしてこれが噂の The Great Firewall ・・・ かと思いましたが、実際にマンホールマップには「天安門」で登録されている情報は一件もありませんでした(笑)。繰り返しますが他意はありませんよ、ええ:
2018020708


(参考)他意はありませんが、参考リンク
中国を含む各国版のGoogleで「天安門事件」を画像検索するとどうなるのか?



次に挑戦したのは「中国国内のサーバーに Hyperledger Fabric を導入してブロックチェーン環境を作る」というものです。こちらの記事を参考に Hyperledger Fabric のインストールを試みました。

同記事内では docker を導入し、docker-compose を導入し、その後に Node.js & npm をインストールしてから composer-cli を導入します。docker & docker-compose までは順調に入りました。その後に Node.js を導入しようと、n package を入れて、Node.js の新しいバージョンを導入しようとしたら・・・
2018020701


・・・やけに時間がかかる・・・
2018020702


・・・まだ終わらん・・・
2018020703


と、結果的には導入できたのですが、このプロセスにこれまでに経験なかったほど時間がかかりました。何か環境が違っているのだろうか・・・


そして改めてこの記事の手順に沿って、npm を使って composer-cli をインストール・・・
2018020706


・・・失敗してしまいました:
2018020707


エラーが記録されているのは暗号化ライブラリである pkcs11js パッケージを導入するタイミングでした。ただここに問題があるのが、別の所の問題が引き金になっているのかは分かっていません。pkcs11js 単体でのインストールには問題なかったのですが、この一連の流れの中では何度試しても 100% ここで引っかかってしまう、という現象に見舞われてしまいました。過去にこんな所でひっかかったことがなかった所で引っかかってしまいました。

エラーメッセージを調べているのですが、未だに原因がよくわかっていません。何がいけないんだろうか?もしかしてさっき変な検索したのが良くなかった??(苦笑)
2018020709


とりあえず、サーバー作成までは意外(?)とあっけなかったのですが、その先は一筋縄ではいかない環境であることが分かりました。うーむ、想定よりも早めに問題に遭遇・・・


もう少しわかりやすく手を加えた上で、いずれちゃんと紹介する機会(BMXUG勉強会?)を作るつもりですが、オープンソースのブロックチェーン環境であるHyperledger Fabric を使ってユーザーと資産の管理、そして資産の譲渡といった最低限の機能を持ったアセット管理プラットフォームを作って、MIT ライセンスで公開しました。

「資産」=「仮想通貨」とみなせばいろいろ話題の仮想通貨プラットフォーム(の基礎)にもなると思います。仮想通貨でなく、普通の資産の管理や譲渡にも使えると思ってます(むしろそっちをイメージして作ってます)。またそこでの作成や譲渡といったトランザクションはブロックチェーン上に記録されるので改竄時のトラッキング機能を内包していることになります。

現時点では Hyperledger Fabric 環境が用意されていることが必須の上、管理プラットフォームとしてのUI未作成で、REST API のみ実装しているだけです。なので「使える人は使える」レベルのものだと思っています(改良予定あり)。 その代わり MIT ライセンスなのでかなり自由度高く改変・改良・再利用することを認めています。今のままでもブロックチェーン環境のデモ程度には使えると思ってます。


そんな、まだまだ普通に使えるレベルのものではないことは理解した上で、僕自身はこのタイミングあたりからフィードバックももらえたらいいなとか、共同開発に興味ある人がいたら・・・という目的もあって公開することにしました。コードはこちら:


導入方法などは README.md を参照・・・していただきたいのですが、Hyperledger Fabric 環境の用意を前提としているなど、まだ現時点ではハードル高いと思ってます。いずれ PaaS や SaaS でもっと気軽に使えるようになることを期待していますが。。


ちなみに、上記のコードはこの週末に GPD Pocket (Ubuntu 版)に Hyperledger Fabric と、Hyperledger Composer を導入したことでスタンドアロンなブロックチェーンアプリケーション開発環境ができ、嬉しくなって地元の津田沼を散歩しながら持ち歩いて、その休憩時に取り出して作りました。なので開発期間は実質週末の2日くらい。それほど凝ったものは作れておらず、ユーザーや資産の作成、ログイン、資産譲渡、といった API が用意されている程度です:
20180203
(↑開発中の様子)


逆に現時点ではまだ検索用の機能がほぼ手付かずだったり、管理用の UI すらなく、唯一 Swagger スタイルのインタラクティブな API Document が用意されている程度です。なのでまだ低レベルな部分もこれから作っていく必要があるもので、その点でも(良くも悪くも)プラットフォームとしての実装段階です。 そんなことを理解した上で「開発に関わってみたいなあ」とか「Hyperledger Fabric の勉強も兼ねて実装してみたいなあ」とか「ぶっちゃけブロックチェーン分からないけど、UI/UXだけでも関わりたいなあ」とか思っている人がいたら心強いっす。もちろん MIT ライセンスで公開している以上、「勝手に使わせてもらって改良する」でも全然オッケーです。個人的には Hyperledger Fabric が広まってほしいなあ、という思いを優先してます。


このページのトップヘ