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タグ:dosbox

IBM Cloud から提供されている 30 日間無料 Kubernetes サービスIBM Kubernetes Service 、以下 "IKS")環境を使って利用することのできるコンテナイメージを1日に1個ずつ 30 日間連続で紹介していきます。

環境のセットアップや制約事項については Day0 のこちらの記事を参照してください。

Day 25 からはアプリケーション系コンテナとその GUI ツールを中心に紹介してます。Day 27 は PC DOS 環境をエミュレートする DOS Box イメージをデプロイする例を紹介します。
dosbox



【イメージの概要】
今日のイメージについては全く興味がない、という人もいると思います。自分の趣味の世界の話です。

昔の PC-DOS 時代のツールやゲームを今でも数多く所有しています。普段は Virtual PC などで DOS 環境を起動できるようにしています。そんな自分にとって、DOS エミュレーター環境はどうしても気になってしまい、ましてや DOS Box の環境をコンテナ環境で実現して、更にコンソールにもアクセスできる、という珍しさからつい動作確認してしまいました。


【イメージのデプロイ】
まずはこちらのファイルを自分の PC にダウンロードしてください:
https://raw.githubusercontent.com/dotnsf/yamls_for_iks/main/dosbox.yaml

今回の DOS Box は内部的には VNC を使ってコンソールにアクセスします。というわけで、VNC の接続パスワードを事前に設定しておく必要があります。このファイルをテキストエディタで開いてパラメータを編集します。具体的には以下1箇所の value 値を変更してください:
・VNCPASSWORD : VNC ログイン時に指定するパスワード(初期値 P@ssw0rd)

ではこのダウンロード&編集した dosbox.yaml ファイルを指定してデプロイします。以下のコマンドを実行する前に Day 0 の内容を参照して ibmcloud CLI ツールで IBM Cloud にログインし、クラスタに接続するまでを済ませておいてください。

そして以下のコマンドを実行します:
$ kubectl apply -f dosbox.yaml

以下のコマンドで DOS Box 関連の Deployment, Service, Pod, Replicaset が1つずつ生成されたことと、サービスが 30901 番ポートで公開されていることを確認します:
$ kubectl get all

NAME                          READY   STATUS    RESTARTS   AGE
pod/dosbox-6db44d7b8f-vx56g   1/1     Running   0          63s

NAME                 TYPE        CLUSTER-IP     EXTERNAL-IP   PORT(S)          AGE
service/dosbox       NodePort    172.21.2.241   <none>        5901:30901/TCP   63s
service/kubernetes   ClusterIP   172.21.0.1     <none>        443/TCP          27d

NAME                     READY   UP-TO-DATE   AVAILABLE   AGE
deployment.apps/dosbox   1/1     1            1           64s

NAME                                DESIRED   CURRENT   READY   AGE
replicaset.apps/dosbox-6db44d7b8f   1         1         1       64s

この後に実際にサービスを利用するため、以下のコマンドでワーカーノードのパブリック IP アドレスを確認します(以下の例であれば 161.51.204.190):
$ ibmcloud ks worker ls --cluster=mycluster-free
OK
ID                                                       パブリック IP    プライベート IP   フレーバー   状態     状況    ゾーン   バージョン
kube-c3biujbf074rs3rl76t0-myclusterfr-default-000000df   169.51.204.190   10.144.185.144    free         normal   Ready   mil01    1.20.7_1543*

つまりこの時点で(上述の結果であれば)アプリケーションは vnc://169.51.204.190:30901 で稼働している、ということになります。VNC クライアントを使って、アプリケーションの URL(上述の方法で確認した URL)にアクセスしてみます。接続時にパスワードを求められるので、yaml ファイルに記載したパスワードを入力します:
vnc0


上図のような画面になりました。(ちょっと xterm が邪魔ですが)裏で DOS コマンドプロンプトが起動していますね。なんとか IKS 内で DOS Box が起動できて、VNC ビューワ経由でアクセスすることができました。



【YAML ファイルの解説】
YAML ファイルはこちらを使っています:
apiVersion: v1
kind: Service
metadata:
  name: dosbox
spec:
  selector:
    app: dosbox
  ports:
  - port: 5901
    protocol: TCP
    targetPort: 5901
    nodePort: 30901
  type: NodePort
---
apiVersion: apps/v1
kind: Deployment
metadata:
  name: dosbox
spec:
  replicas: 1
  selector:
    matchLabels:
      app: dosbox
  template:
    metadata:
      labels:
        app: dosbox
    spec:
      containers:
      - name: dosbox
        image: jgoerzen/dosbox
        env:
        - name: VNCPASSWORD
          value: "P@ssw0rd"
        ports:
        - containerPort: 5901

Deployment 1つと、Service 1つ、環境変数の指定も不要で本シリーズで紹介する 30 個の中でも指折りにシンプルな YAML ファイルです。一応解説を加えておきます。アプリケーションそのものは 5901 番ポートで動作するように作られているため、NodePort 30901 番を指定して、外部からは 30901 番ポートでアクセスできるようにしています(NodePort として指定可能な番号の範囲は 30000 ~ 32767 です、指定しない場合は空いている番号がランダムに割り振られます)。また ReplicaSet は1つだけで作りました。


デプロイしたコンテナイメージを削除する場合はデプロイ時に使った YAML ファイルを再度使って、以下のコマンドを実行します。不要であれば削除しておきましょう:
$ kubectl delete -f dosbox.yaml


【紹介したイメージ】
https://hub.docker.com/r/jgoerzen/dosbox


【紹介記録】
Dayカテゴリーデプロイ内容
0準備準備作業
1ウェブサーバーhostname
2Apache HTTP
3Nginx
4Tomcat
5Websphere Liberty
6データベースMySQL
7phpMyAdmin
8PostgreSQL
9pgAdmin4
10MongoDB
11Mongo-Express
12Redis
13RedisCommander
14ElasticSearch
15Kibana
16CouchDB
17CouchBase
18HATOYA
19プログラミングNode-RED
20Scratch
21Eclipse Orion
22Swagger Editor
23R Studio
24Jenkins
25アプリケーションFX
262048
27DOS Box
28VNC Server(Lubuntu)
29Drupal
30WordPress

コンテナオーケストレーション環境である kubernetes(以下 k8s)上で PC-DOS エミュレーターである DOSBOX を動かしてみました。

なお、以下で紹介する k8s の環境としては以前にこのブログで紹介した minikube 環境を使います。minikube の(Windows 10 + WSL 向けの)環境構築手順はこちらです:
Windows 10 に minikube を導入して WSL から利用する


また k8s にデプロイする DOSBOX のイメージは Docker Hub に公開されていたこれを使うことにします:
DOSBox for Docker Server


上記ページによると、このイメージは以下2つの特徴がある模様です:
(1)起動後、5901 番ポートで VNC 接続を待ち受ける(つまり VNC 経由で DOSBOX に接続する)
(2)VNC のパスワードは環境変数 VNCPASSWORD で指定する


ではこのことを理解した上で、まずはイメージを k8s 環境へデプロイします:

環境変数 VNCPASSWORD=P@ssw0rd を指定して jgoerzen/dosbox を k8s に dosbox という名前でデプロイ
$ kubectl run dosbox --image=jgoerzen/dosbox --env=VNCPASSWORD=P@ssw0rd

kubectl run --generator=deployment/apps.v1 is DEPRECATED and will be removed in a future version. Use kubectl run --generator=run-pod/v1 or kubectl create instead.
deployment.apps/dosbox created

dosbox のポート 5901 を expose
$ kubectl expose deployment dosbox --type="NodePort" --port=5901

service/dosbox exposed

これでイメージのデプロイは完了し、利用可能になっているはずです。最後に利用するために必要な情報を確認しておきます:

IP アドレスを確認
$ kubectl cluster-info

Kubernetes master is running at https://192.168.99.100:8443
KubeDNS is running at https://192.168.99.100:8443/api/v1/namespaces/kube-system/services/kube-dns:dns/proxy

To further debug and diagnose cluster problems, use 'kubectl cluster-info dump'.


外部公開ポート番号を確認
$ kubectl get svc

NAME         TYPE        CLUSTER-IP       EXTERNAL-IP   PORT(S)          AGE
dosbox       NodePort    10.105.213.111                 5901:32286/TCP   9s
kubernetes   ClusterIP   10.96.0.1                      443/TCP          103d

上記の結果から 192.168.99.100:32286 で VNC 接続します:
2019122002


接続時にパスワードを聞かれます。デプロイ時に環境変数 VNCPASSWORD で指定した文字列(上記の場合は P@ssw0rd)を入力します:
2019122003


正しく接続できると xterm のターミナルと、DOSBOX アプリが起動した X Window が表示され、DOSBOX が利用できるようになります:
2019122001


これで DOS 環境を共有するハードルを1つ超えた、かも!


PC-DOS 環境のエミュレータである DOSBOX を日本語化した上で、 FEP(Front End Processor) と呼ばれる日本語入力環境を有効にしてみました。同じことができる環境にある人は少ないと思いますが、同じ手順を紹介した記事をネット上で見つけることができなかったので記録目的としてもブログエントリにしてみました。

まず DOSBOX は PC-DOS のエミュレータ・ソフトウェアです。DOSBOX 自体は MacOS 版や Linux 版も存在していますが、以下は Windows 10 環境を前提とした紹介です。64bit OS である Windows10 の中で 16bit OS の PC-DOS をエミュレートするものです。なおコマンドラインツールとしては Windows10 標準の「コマンドプロンプト」もありますし、同様のコマンドが実行できるようになってはいますが、コマンドプロンプトはあくまで 64bit 環境で動くものであって、16bit 時代のアプリケーションが動くわけではありません。試しにコマンドプロンプト内で 16bit アプリケーションを無理やり実行すると、こんなメッセージが表示されます(動きません):
2019121101


Windows10 環境内で、この 16bit 時代の DOS アプリケーションを動かすには PC-DOS のエミュレータが必要になります。PC-DOS 自体を所有しているのであれば仮想化環境を使ってその中で PC-DOS をインストールすることでも実現できます。実際、自分はしばらくこの方法で PC-DOS 環境を残していました。特に Microsoft Virtual-PC は EMM386 までサポートしていて、コンベンショナルメモリを多く必要とするアプリまで動かすことができていました。が、Windows10 になって Microsoft Virtual-PC は動かなくなってしまいました。。現在はメモリの制約を受けながら KVM 内でひっそりと動かしています。。


※余談ですが自分は PC-DOS の頃のゲームが今でも好きで、DOOMEpic Pinball などは多く流通していたシェアウェア版ではなく、eBay などから有料版を購入することもありました。今でもたまに遊んでいます:
2019121501
(↑ Epic Pinball 有料版でのみ遊べるテーブル "CYBORGIRL" 、このために $60 で無制限版を購入)


ただこれらの仮想マシンを使った方法は(PC-DOS のメディアの入手が必要になることからも)少々ハードルが高いです。 そういった場合には DOSBOX は有効な選択肢となります。DOSBOX は英語版の DOS 互換 OS が用意(内蔵)されたソフトウェアエミュレータで、ホスト PC 内に 16bit アプリケーションを詰め込んだフォルダを用意しておけば、そのフォルダをマウントすることで DOSBOX の環境内でもこれらのアプリケーションを利用することができる、というものです。

一方、DOSBOX で提供されているのはあくまで「英語版の」DOS 互換 OS 環境です。キーボード配置に限ってはこちらから日本語キーボードに対応したものをダウンロードできますが、日本語の表示ができるわけではありませんし、日本語の入力となると上述の FEP のソフトウェアを用意した上で更に別の設定が必要になります。 自分は上記のようにもともと Virtual-PC や KVM 内に PC-DOS (7.0) 環境を持っていて、そこにはゲームだけでなく、エディタや日本語 FEP といった有償版のソフトウェア環境も残していたので、それらを使って DOSBOX の日本語入力環境を整えてみました。以下、その手順の紹介です。


手順としては大きく3つです。(1)まずは上述の DOSBOX を導入します。

(2)次に専用のフォルダを1つ作成して、その中に DOSBOX から利用するための DOS 用ツールをまとめていれておきます。自分の場合は c:\myapps\DOSBOX\ というフォルダを作り、その下に日本語フォントを含む表示&入力用のツール類を入れておきます:
(c:\myapps\DOSBOX\ 以下の主なフォルダ)
・DOS\ : $FONT.SYS など、後述の PC-DOS 日本語フォント表示用ツールをまとめていれておくフォルダ
・DOSJ\ : ADDDEV, DISPV, CHEJ など、後述の日本語モードで動かすためのツールをまとめていれておくフォルダ
・VZ\ : Vz Editor のインストールフォルダ
・WX2\ : WX2 のファイル群を入れておくフォルダ
2019121502


ちなみに FEP は自分が愛用していたエー・アイ・ソフトの WX2 を使う前提で以下を紹介します。

(3)最後にdosbox.conf ファイルの最後([autoexec] と書かれた行より下)に以下を追加します:
mount c c:\myapps\DOSBOX
c:

\DOSJ\adddev c:\DOSFONT.SYS
\DOSJ\DISPV
\DOSJ\CHEJ JP
\DOSJ\VMX 70

set path=c:\DOSJ;c:\DOS;c:\BIN;c:\VZ

\DOSJ\adddev c:\WX2.SYS

1行目の mount c c:\myapps\DOSBOX が実行されるとホスト( Windows10 )環境での c:\myapps\DOSBOX フォルダを、DOSBOX 環境での c ドライブ(のルートディレクトリ)としてマウントし、このフォルダ以下にあるツール類が DOSBOX から利用できるようになります。

なお、このファイル内で2箇所 \DOSJ\adddev コマンドが実行されています。1つ目は C:\DOSFONT.SYS ファイルをパラメータに指定していますが、この C:\DOSFONT.SYS ファイルの中身は以下のようにしています。もともとの PC-DOS に含まれていたツール類を使って、DOSBOX 内で日本語を表示できるようフォントやディスプレイモードを設定しています:
DEVICE=C:\DOS\$FONT.SYS
DEVICE=C:\DOS\SETVER.EXE
DEVICE=C:\DOS\$DISP.SYS
DEVICE=C:\DOS\ANSI.SYS /X
DEVICE=c:\DOS\KKCFUNC.SYS

また2つ目の C:\WX2.SYS ファイルの中身は以下です。WX2 を ATOK7 仕様で利用できるようにデバイスドライバ設定を指定しています:
DEVICE=C:\WX2\WXK.SYS /A5
DEVICE=C:\WX2\WX2A7.SYS /INI=C:\WX2\WX2SYS.INI /A5

この設定にして DOSBOX を起動し、ALT+半角全角キーを押すと WX2 による日本語入力モードに切り替わります:
DOSBOX_WX2

(↑できた!)


なお、DOSBOX 日本語モードで Vz Editor を使える(日本語入力できる)ことは確認できましたが、ファイラーの FD などはファイルを見つけることができませんでした。こちらは使えないようで、DOSBOX の日本語環境下で使える DOS ツールと使えない DOS ツールをある程度選別しておく必要があるように感じています。ここが結構シビアな問題かも。


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