かなり以前に Bluemix(IBM Cloud) の CloudFoundry ランタイム環境でカスタムドメインを運用する手順を紹介したことがありました。今回はその IKS(IBM Kubernetes Services) 版とも言える内容で、特にカスタムドメイン管理を適用する部分については IBM Cloud から提供されるドメイン単位でのオール・イン・ワン・セキュリティーサービスでもある CIS(Cloud Internet Services) を使った場合の手順を確認する機会があったので、その流れを紹介します。
なお、今回紹介する手順を実行するための前提条件として (0) カスタムドメインを所有していること、(1) ベーシックプラン以上の IBM Cloud アカウントを取得していること、(2) IKS(+ Ingress)サービスが利用できること、そして (3) CIS サービスが利用できるという3点が必要です。(0) は今回の作業では当然必要です。また (1) がないと (2) も (3) も利用できないので IBM Cloud アカウントは取得しているとして、このアカウントは無料のライトプランではなく、ベーシックプラン以上でないと (2) も (3) も作成できない点にご注意ください。
また (2) について、IKS は1ヶ月間無料の Free プランもありますが、今回紹介する内容では(Free プランでは使えない) Ingress によるサーバー名管理が必要なため、事実上この (2) は無料では試せない点をご了承ください。シングルゾーンの最弱スペックで1ワーカーノード環境(1時間で約13円)でも構いませんが、IKS を利用するための料金が必要です。なお IKS ではなく上位版の OpenShift 環境でも大丈夫です:
(3) の CIS は1アカウントにつき1回だけ、30日間無料プランを申し込むことが可能です。このプランを利用せずにスタンダードプランを利用する場合は、ドメイン1つにつき1ヶ月約30000円です:
では以下で具体的な手順を追いながら説明します。
【IKS + Ingress を使ってアプリケーションをデプロイする】
まずは IKS + Ingress 環境で動くウェブアプリケーションを用意します。この時点ではカスタムドメインを意識せずに環境を作ります。
自分で IKS にデプロイしたアプリケーションがあればそれを使っていただいても構いませんが、動作確認用のサンプルとして、以前のブログエントリでも紹介したこのアプリケーションを使う方法も紹介します(アクセスすると、サーバーの /etc/hostname ファイルの内容を表示するだけのアプリケーションです)。ソースコード内に IKS + Ingress 環境を想定したデプロイ用の yaml ファイルが含まれているのでこれを自分の環境向けに編集してデプロイに使うことにします。
まずはソースコードを git clone するかダウンロードしてください:
厳密には今回の作業で最低限必要になるのは yaml/app_deployment_ingresssample.yaml ファイル1つだけなので、ソースコード等に興味なく単に動作確認するだけであれば、このファイルをダウンロードしていただくだけでも構いません:
https://raw.githubusercontent.com/dotnsf/hostname/master/yaml/app_deployment_ingresssample.yaml
次にダウンロードした (yaml/)app_deployment_ingresssample.yaml ファイルを自分の環境向けに編集するのですが、まずは自分の Ingress サブドメインを確認しておく必要があります。IBM Cloud にログインし、利用中の IKS のダッシュボードを開いて Overview メニューから Ingress Subdomain 欄を参照して、その値を確認します:
ダウンロードした app_deployment_ingresssample.yaml ファイルをテキストエディタで開き、以下の部分を上で参照した自分の Ingress Subdomain の値に書き換えます。また k8s クラスターを東京( jp-tok )以外のリージョンで作成した場合はサブドメイン情報に続くリージョン情報も自分のリージョンに書き換えてください。最後に保存します:
これでデプロイの準備が完了したので、実際に IKS へデプロイします:
デプロイが成功すると Ingress が有効になり、https://(上述の spec.tls.hosts の値)/ でアプリケーションにアクセスできるようになります:
IKS 上にデプロイされたアプリケーションの稼働までができました。この時点では IBM Cloud のドメインによるサーバー名でアクセスされていますが、引き続いて CIS を使い、このアプリケーションをカスタムドメインのサーバー名でアクセスできるようにしていきます。
【CIS にカスタムドメインを登録する】
次の手順は CIS 側の設定です。CIS はドメイン単位で設定を行います。したがってカスタムドメインを使う場合はそのカスタムドメインを登録した上で証明書等を発行する必要があります。
今回は私個人が所有する pi314.jp というドメインを使って説明します。最終的には上述の IKS 上で動く hostname アプリケーションを https://hostname.pi314.jp/ という URL で利用できるように設定していくことにします。以下、"pi314.jp" 部分を皆さんが所有するドメイン名に置き換えて参照してください。
カスタムドメインを CIS に登録する際の最初の手順は利用ドメインの登録とネームサーバーの置き換えです。まず何はともあれ自分のドメインを CIS に管理させるために登録を行います。自分の CIS サービスを開き、Overview メニューから Add domain ボタンをクリックします:
画面右にウィザード形式のダイアログが現れるので、指示に従って入力していきます。まずは利用するドメイン(下図では pi314.jp)を入力して Next を選択します:
次の DNS レコード登録画面はスキップします。そのまま Next を選択:
最後にドメイン管理のためのネームサーバーを変更しろ、という以下のような画面が現れます:
DNS で利用するネームサーバーを CIS が管理するネームサーバーに変更する必要があります。この具体的な手順は独自ドメインを取得した業者によって異なりますが、プライマリネームサーバーとセカンダリネームサーバーをそれぞれ以下の内容に変更してください(画面は GoDaddy での DNS 管理画面のものです):
プライマリネームサーバー: ns012.name.cloud.ibm.com
セカンダリネームサーバー: ns091.name.cloud.ibm.com
変更が完了したら、少し待ってから上図の Next を選択します。変更内容がネット上に反映されるまで少し時間が必要なので、すぐに実行すると「1時間後に再実行しろ」といった内容のエラーになるかもしれません。その場合は少し待ってから再実行してください。
無事に変更内容が確認できた場合は以下のような画面になります。最後に Done を選択:
CIS のコンソール画面に移動します。この時点で登録したカスタムドメインが Active になっていることが確認できます。これでドメインの登録とネームサーバーの置き換え作業は完了しました:
【CIS に DNS を登録し、エッジとサーバーの接続方法の選択】
ネームサーバーの置き換え後に行う必要があるのは、DNS 設定でカスタムドメインを使ったサーバー名(今回は hostname.pi314.jp)で実際に動いているサーバー(IKS の yaml ファイルで spec.tls.hosts に書かれた値、つまりウェブブラウザで動作確認した時の URL のサーバー名)にアクセスさせるための CNAME の登録と、カスタムドメインのエッジ証明書の作成(確認)、そして CIS のエッジサーバーから IKS のサーバーへどのような方法で接続するかの接続方法の選択です。すべて CIS コンソールから行います。
まずは CNAME を登録します。"Reliability" メニューから "DNS" タブを選択します。画面下部に "DNS records" 欄がありますが、おそらく最初は中身が空のはずです。ここに新しいレコードを作成するため、Add ボタンを選択します:
画面右に "Add record" ダイアログが表示されるので、ここで以下のように入力します:
Type: "CNAME" を選択
TTL: "Automatic" のまま
Name: カスタムドメインを使ってアクセスさせるホスト名のドメインを抜いた部分
(例えば hostname.pi314.jp でアクセスさせたい場合であれば hostname)
Alias domain name: 現在動いているサーバー名
(上述のウェブサーバーで動作確認した時に入力した IBM Cloud ドメインのサーバー名)
最後に Add ボタンをクリックします:
1つ前の画面に戻り、DNS records が1件追加されていることを確認し、Proxy を ON の状態にしておきます。これで DNS の登録も完了して、hostname.pi314.jp というホスト名で IKS で稼働中のアプリケーションを指し示すようになりました:
続けて https 接続のためのエッジ証明書を確認します。CIS コンソールから "Security" メニューを選び、画面下部に Edge certificates 欄を参照します。ここにはカスタムドメインとそのワイルドカード名(今回の例であれば pi314.jp と *.pi314.jp)のエッジ証明書が入力されていればそのままで大丈夫です(2021/06/23 時点の仕様では自動的に作成されているはずです)。もしもここが空になっていたら、右上の Add ボタンを押して、この2つを指定してエッジ証明書を追加してください:
最後に CIS のエッジサーバーと、実際のサーバーとの間の通信手段を選択します。同じ "Security" メニューの画面内の TLS mode を確認します(デフォルトは End-to-end CA signed)。ここでセキュリティ要件に合わせて通信方法を選択します。最もセキュリティが高いのは End-to-end CA signed ですが、この場合は別途ドメインのワイルドカード証明書を取得する必要があります。今回は1つ下の End-to-end flexible を選択します(自動発行する自己証明書を使った暗号化通信を行うモードです)。なおこれらの選択肢の違いについて、詳しくはこちらを参照ください:
以上で CIS コンソールでの作業も完了です。
【デプロイ設定を変更して IKS にアプリケーションを再デプロイ】
最後にデプロイ設定を変更してアプリケーションを再デプロイします。現在は IBM Cloud ドメイン名でアクセスされる前提でデプロイしていますが、今後はカスタムドメインを使ったアクセスを想定する必要があり、そのための変更を app_deployment_ingressample.yaml ファイルに反映させた上で再デプロイします。
この方法には2つあります。1つは旧サーバー名でのアクセスはできないようにした上でカスタムドメインでの新サーバー名のアクセスを許可する場合、もう1つは旧サーバー名でのアクセスを許可しながら(残しながら)カスタムドメインでの新サーバー名でもアクセスを許可する場合です。両方のケースを順に説明します。
まず旧サーバー名でのアクセスが不要になる場合は前者の(旧サーバー名ではアクセスできないようにする)ケースになります。この場合は app_deployment_ingressample.yaml ファイルの2箇所を以下のように書き換えます:
"#" で始まる行はコメントなので無くても構いません。要するに spec.tls.hosts と spec.rules.hosts の値を旧サーバー名ではなく新サーバー名に変更する、という作業が必要になります。
もう一方の、旧サーバー名でのアクセスを残しながら新サーバー名でもアクセスできるようにする場合は app_deployment_ingressample.yaml ファイルに新しい Ingress 設定を書き足す形で以下のように書き換えます:
目的に応じた変更をした上で、改めて新しい yaml ファイルを使ってアプリケーションを再デプロイします:
再デプロイ後に新しいホスト名で https アクセスができるようになったことを確認します:
以上、CIS + IKS( + Ingress ) の環境でカスタムドメインを使った https アクセスを実現するための設定手順でした。CIS は今回紹介した DNS 関連の機能だけでなく、本来得意とするセキュリティ強化の機能が簡単に使える強みもあるので、IBM Cloud を使って k8s 環境のアプリケーションを安全に使う上での非常に便利なコンパニオンサービスだと感じています。
なお、今回紹介する手順を実行するための前提条件として (0) カスタムドメインを所有していること、(1) ベーシックプラン以上の IBM Cloud アカウントを取得していること、(2) IKS(+ Ingress)サービスが利用できること、そして (3) CIS サービスが利用できるという3点が必要です。(0) は今回の作業では当然必要です。また (1) がないと (2) も (3) も利用できないので IBM Cloud アカウントは取得しているとして、このアカウントは無料のライトプランではなく、ベーシックプラン以上でないと (2) も (3) も作成できない点にご注意ください。
また (2) について、IKS は1ヶ月間無料の Free プランもありますが、今回紹介する内容では(Free プランでは使えない) Ingress によるサーバー名管理が必要なため、事実上この (2) は無料では試せない点をご了承ください。シングルゾーンの最弱スペックで1ワーカーノード環境(1時間で約13円)でも構いませんが、IKS を利用するための料金が必要です。なお IKS ではなく上位版の OpenShift 環境でも大丈夫です:
(3) の CIS は1アカウントにつき1回だけ、30日間無料プランを申し込むことが可能です。このプランを利用せずにスタンダードプランを利用する場合は、ドメイン1つにつき1ヶ月約30000円です:
では以下で具体的な手順を追いながら説明します。
【IKS + Ingress を使ってアプリケーションをデプロイする】
まずは IKS + Ingress 環境で動くウェブアプリケーションを用意します。この時点ではカスタムドメインを意識せずに環境を作ります。
自分で IKS にデプロイしたアプリケーションがあればそれを使っていただいても構いませんが、動作確認用のサンプルとして、以前のブログエントリでも紹介したこのアプリケーションを使う方法も紹介します(アクセスすると、サーバーの /etc/hostname ファイルの内容を表示するだけのアプリケーションです)。ソースコード内に IKS + Ingress 環境を想定したデプロイ用の yaml ファイルが含まれているのでこれを自分の環境向けに編集してデプロイに使うことにします。
まずはソースコードを git clone するかダウンロードしてください:
$ git clone https://github.com/dotnsf/hostname
厳密には今回の作業で最低限必要になるのは yaml/app_deployment_ingresssample.yaml ファイル1つだけなので、ソースコード等に興味なく単に動作確認するだけであれば、このファイルをダウンロードしていただくだけでも構いません:
https://raw.githubusercontent.com/dotnsf/hostname/master/yaml/app_deployment_ingresssample.yaml
次にダウンロードした (yaml/)app_deployment_ingresssample.yaml ファイルを自分の環境向けに編集するのですが、まずは自分の Ingress サブドメインを確認しておく必要があります。IBM Cloud にログインし、利用中の IKS のダッシュボードを開いて Overview メニューから Ingress Subdomain 欄を参照して、その値を確認します:
ダウンロードした app_deployment_ingresssample.yaml ファイルをテキストエディタで開き、以下の部分を上で参照した自分の Ingress Subdomain の値に書き換えます。また k8s クラスターを東京( jp-tok )以外のリージョンで作成した場合はサブドメイン情報に続くリージョン情報も自分のリージョンに書き換えてください。最後に保存します:
apiVersion: v1 kind: Service metadata: name: hostname spec: selector: app: hostname ports: - port: 8080 protocol: TCP targetPort: 8080 type: ClusterIP --- apiVersion: apps/v1 kind: Deployment metadata: name: hostname spec: replicas: 1 selector: matchLabels: app: hostname template: metadata: labels: app: hostname spec: containers: - name: hostname image: dotnsf/hostname ports: - containerPort: 8080 --- apiVersion: networking.k8s.io/v1beta1 kind: Ingress metadata: name: hostname.yourcluster-xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx-0000.jp-tok.containers.appdomain.cloud spec: tls: - hosts: - hostname.yourcluster-xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx-0000.jp-tok.containers.appdomain.cloud secretName: yourcluster-xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx-0000 rules: - host: hostname.yourcluster-xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx-0000.jp-tok.containers.appdomain.cloud http: paths: - path: / backend: serviceName: hostname servicePort: 8080
これでデプロイの準備が完了したので、実際に IKS へデプロイします:
$ kubectl apply -f yaml/app_deployment_ingresssample.yaml
デプロイが成功すると Ingress が有効になり、https://(上述の spec.tls.hosts の値)/ でアプリケーションにアクセスできるようになります:
IKS 上にデプロイされたアプリケーションの稼働までができました。この時点では IBM Cloud のドメインによるサーバー名でアクセスされていますが、引き続いて CIS を使い、このアプリケーションをカスタムドメインのサーバー名でアクセスできるようにしていきます。
【CIS にカスタムドメインを登録する】
次の手順は CIS 側の設定です。CIS はドメイン単位で設定を行います。したがってカスタムドメインを使う場合はそのカスタムドメインを登録した上で証明書等を発行する必要があります。
今回は私個人が所有する pi314.jp というドメインを使って説明します。最終的には上述の IKS 上で動く hostname アプリケーションを https://hostname.pi314.jp/ という URL で利用できるように設定していくことにします。以下、"pi314.jp" 部分を皆さんが所有するドメイン名に置き換えて参照してください。
カスタムドメインを CIS に登録する際の最初の手順は利用ドメインの登録とネームサーバーの置き換えです。まず何はともあれ自分のドメインを CIS に管理させるために登録を行います。自分の CIS サービスを開き、Overview メニューから Add domain ボタンをクリックします:
画面右にウィザード形式のダイアログが現れるので、指示に従って入力していきます。まずは利用するドメイン(下図では pi314.jp)を入力して Next を選択します:
次の DNS レコード登録画面はスキップします。そのまま Next を選択:
最後にドメイン管理のためのネームサーバーを変更しろ、という以下のような画面が現れます:
DNS で利用するネームサーバーを CIS が管理するネームサーバーに変更する必要があります。この具体的な手順は独自ドメインを取得した業者によって異なりますが、プライマリネームサーバーとセカンダリネームサーバーをそれぞれ以下の内容に変更してください(画面は GoDaddy での DNS 管理画面のものです):
プライマリネームサーバー: ns012.name.cloud.ibm.com
セカンダリネームサーバー: ns091.name.cloud.ibm.com
変更が完了したら、少し待ってから上図の Next を選択します。変更内容がネット上に反映されるまで少し時間が必要なので、すぐに実行すると「1時間後に再実行しろ」といった内容のエラーになるかもしれません。その場合は少し待ってから再実行してください。
無事に変更内容が確認できた場合は以下のような画面になります。最後に Done を選択:
CIS のコンソール画面に移動します。この時点で登録したカスタムドメインが Active になっていることが確認できます。これでドメインの登録とネームサーバーの置き換え作業は完了しました:
【CIS に DNS を登録し、エッジとサーバーの接続方法の選択】
ネームサーバーの置き換え後に行う必要があるのは、DNS 設定でカスタムドメインを使ったサーバー名(今回は hostname.pi314.jp)で実際に動いているサーバー(IKS の yaml ファイルで spec.tls.hosts に書かれた値、つまりウェブブラウザで動作確認した時の URL のサーバー名)にアクセスさせるための CNAME の登録と、カスタムドメインのエッジ証明書の作成(確認)、そして CIS のエッジサーバーから IKS のサーバーへどのような方法で接続するかの接続方法の選択です。すべて CIS コンソールから行います。
まずは CNAME を登録します。"Reliability" メニューから "DNS" タブを選択します。画面下部に "DNS records" 欄がありますが、おそらく最初は中身が空のはずです。ここに新しいレコードを作成するため、Add ボタンを選択します:
画面右に "Add record" ダイアログが表示されるので、ここで以下のように入力します:
Type: "CNAME" を選択
TTL: "Automatic" のまま
Name: カスタムドメインを使ってアクセスさせるホスト名のドメインを抜いた部分
(例えば hostname.pi314.jp でアクセスさせたい場合であれば hostname)
Alias domain name: 現在動いているサーバー名
(上述のウェブサーバーで動作確認した時に入力した IBM Cloud ドメインのサーバー名)
最後に Add ボタンをクリックします:
1つ前の画面に戻り、DNS records が1件追加されていることを確認し、Proxy を ON の状態にしておきます。これで DNS の登録も完了して、hostname.pi314.jp というホスト名で IKS で稼働中のアプリケーションを指し示すようになりました:
続けて https 接続のためのエッジ証明書を確認します。CIS コンソールから "Security" メニューを選び、画面下部に Edge certificates 欄を参照します。ここにはカスタムドメインとそのワイルドカード名(今回の例であれば pi314.jp と *.pi314.jp)のエッジ証明書が入力されていればそのままで大丈夫です(2021/06/23 時点の仕様では自動的に作成されているはずです)。もしもここが空になっていたら、右上の Add ボタンを押して、この2つを指定してエッジ証明書を追加してください:
最後に CIS のエッジサーバーと、実際のサーバーとの間の通信手段を選択します。同じ "Security" メニューの画面内の TLS mode を確認します(デフォルトは End-to-end CA signed)。ここでセキュリティ要件に合わせて通信方法を選択します。最もセキュリティが高いのは End-to-end CA signed ですが、この場合は別途ドメインのワイルドカード証明書を取得する必要があります。今回は1つ下の End-to-end flexible を選択します(自動発行する自己証明書を使った暗号化通信を行うモードです)。なおこれらの選択肢の違いについて、詳しくはこちらを参照ください:
以上で CIS コンソールでの作業も完了です。
【デプロイ設定を変更して IKS にアプリケーションを再デプロイ】
最後にデプロイ設定を変更してアプリケーションを再デプロイします。現在は IBM Cloud ドメイン名でアクセスされる前提でデプロイしていますが、今後はカスタムドメインを使ったアクセスを想定する必要があり、そのための変更を app_deployment_ingressample.yaml ファイルに反映させた上で再デプロイします。
この方法には2つあります。1つは旧サーバー名でのアクセスはできないようにした上でカスタムドメインでの新サーバー名のアクセスを許可する場合、もう1つは旧サーバー名でのアクセスを許可しながら(残しながら)カスタムドメインでの新サーバー名でもアクセスを許可する場合です。両方のケースを順に説明します。
まず旧サーバー名でのアクセスが不要になる場合は前者の(旧サーバー名ではアクセスできないようにする)ケースになります。この場合は app_deployment_ingressample.yaml ファイルの2箇所を以下のように書き換えます:
apiVersion: v1 kind: Service metadata: name: hostname spec: selector: app: hostname ports: - port: 8080 protocol: TCP targetPort: 8080 type: ClusterIP --- apiVersion: apps/v1 kind: Deployment metadata: name: hostname spec: replicas: 1 selector: matchLabels: app: hostname template: metadata: labels: app: hostname spec: containers: - name: hostname image: dotnsf/hostname ports: - containerPort: 8080 --- apiVersion: networking.k8s.io/v1beta1 kind: Ingress metadata: name: hostname.yourcluster-xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx-0000.jp-tok.containers.appdomain.cloud spec: tls: - hosts: # - hostname.yourcluster-xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx-0000.jp-tok.containers.appdomain.cloud - hostname.pi314.jp secretName: yourcluster-xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx-0000 rules: # - host: hostname.yourcluster-xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx-0000.jp-tok.containers.appdomain.cloud - host: hostname.pi314.jp http: paths: - path: / backend: serviceName: hostname servicePort: 8080
"#" で始まる行はコメントなので無くても構いません。要するに spec.tls.hosts と spec.rules.hosts の値を旧サーバー名ではなく新サーバー名に変更する、という作業が必要になります。
もう一方の、旧サーバー名でのアクセスを残しながら新サーバー名でもアクセスできるようにする場合は app_deployment_ingressample.yaml ファイルに新しい Ingress 設定を書き足す形で以下のように書き換えます:
apiVersion: v1
kind: Service
metadata:
name: hostname
spec:
selector:
app: hostname
ports:
- port: 8080
protocol: TCP
targetPort: 8080
type: ClusterIP
---
apiVersion: apps/v1
kind: Deployment
metadata:
name: hostname
spec:
replicas: 1
selector:
matchLabels:
app: hostname
template:
metadata:
labels:
app: hostname
spec:
containers:
- name: hostname
image: dotnsf/hostname
ports:
- containerPort: 8080
---
apiVersion: networking.k8s.io/v1beta1
kind: Ingress
metadata:
name: hostname.yourcluster-xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx-0000.jp-tok.containers.appdomain.cloud
spec:
tls:
- hosts:
- hostname.yourcluster-xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx-0000.jp-tok.containers.appdomain.cloud
secretName: yourcluster-xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx-0000
rules:
- host: hostname.yourcluster-xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx-0000.jp-tok.containers.appdomain.cloud
http:
paths:
- path: /
backend:
serviceName: hostname
servicePort: 8080
---
apiVersion: networking.k8s.io/v1beta1
kind: Ingress
metadata:
name: hostname.yourcluster-xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx-0000.jp-tok.containers.appdomain.cloud
spec:
tls:
- hosts:
- hostname.pi314.jp
rules:
- host: hostname.pi314.jp
http:
paths:
- path: /
backend:
serviceName: hostname
servicePort: 8080
目的に応じた変更をした上で、改めて新しい yaml ファイルを使ってアプリケーションを再デプロイします:
$ kubectl apply -f yaml/app_deployment_ingresssample.yaml
再デプロイ後に新しいホスト名で https アクセスができるようになったことを確認します:
以上、CIS + IKS( + Ingress ) の環境でカスタムドメインを使った https アクセスを実現するための設定手順でした。CIS は今回紹介した DNS 関連の機能だけでなく、本来得意とするセキュリティ強化の機能が簡単に使える強みもあるので、IBM Cloud を使って k8s 環境のアプリケーションを安全に使う上での非常に便利なコンパニオンサービスだと感じています。