GitHub が提供をはじめた CI/CD 機能である GitHub Actions を使って IBM Cloud の IKS(IBM Kubernetes Services) にアプリケーションをデプロイできることを確認したので、一連の手順を紹介します。
【何をする?】
簡単に言うと、GitHub のリポジトリにアプリケーションのソースコードをコミット&プッシュすると、その最新コードのアプリケーションが IBM Cloud 内の Kubernetes サービスへ自動デプロイされて公開される、ということを GitHub 内の機能だけで実現します。
なお、GitHub Actions は GitHub の無料アカウントで使える機能であることに加え、IBM Cloud の IKS も(クレジットカード登録が必要な BASIC アカウントに切り替える必要はありますが)Kubernetes のシングルワーカーノードが 30 日間無料で利用できます。 以下に紹介する内容は全て無料で試すことができる内容です。
では以下に IKS の準備、GitHub の準備に続けて実際にアプリケーションコードをコミットして IKS 上で動かす所までの手順を紹介します。
【IKS の準備】
IBM Cloud で IKS サービスを作成します。IBM Cloud にログインします。ライトアカウントの場合は IKS が利用できないため、クレジットカードを登録して BASIC アカウントに切り替えるか、または新たにアカウントを作成して BASIC アカウントに切り替える必要があります。
BASIC アカウントでログイン後、画面右上の「リソースの作成」ボタンをクリックします:
作成するサービスを一覧から選択します。画面左メニューから「サービス」-「コンピュート」を選択し、画面右の一覧から "Kubernetes Service(以下 IKS)" を選択します:
IKS は有償版と無償版(30日経過後に削除)があります。以下は無償版である「無料クラスター」を選択している想定で紹介を続けます。クラスター名は "mycluster" 、リソースグループは "Default"(いずれも既定値)として画面右の「作成」ボタンをクリックします:
ここから IKS 環境の作成が始まります。操作できる状態になるまでしばらく(数10分程度)かかります:
この IKS の準備をしている時間を使って、この後の作業で利用する API キーを用意しておきます。画面右上のメニューから「管理」を選び、「アクセス(IAM)」を右クリックしてリンクを新しいタブで開く形で(つまり別ウィンドウや別タブで開く形で)選択します:
別ウィンドウでアクセス設定画面が開いたら、画面左メニューで「API キー」を選び、「IBM Cloud API キーの作成」ボタンをクリックします:
ダイアログが表示されるので API キーの名称(任意ですが、例えば "API Key for GitHub Actions" など)を入力して「作成」します:
正しく実行できると以下のような画面になります。作成された API キーはマスクされ、表示されていません。この画面をこのまま閉じてしまうと作成された API キーの内容を再度確認することはできなくなるため、ファイルでダウンロードしておくか、クリップボードにコピーしておくか、目のアイコンをクリックして、マスクを外して表示し、その内容をどこかに保存しておく必要があります:
目のアイコンをクリックするとマスクがはずれ、API キーの値を確認することができます。繰り返しますが、このダイアログを消すと API キーを再確認することはできません。忘れてしまった場合は再度 API キーを新規作成する必要がある点に注意してください。なんらかの方法で API キーの内容を再確認できるようこの内容を保存しておきます(後で使います):
あらためて IKS サービスの作成状況を確認しておきましょう。「ファイナライズ中」と出ていればあと少しです。。。:
しばらく待って全ての準備が完了すると、下図のように「通常」というステータスに変わります。この状態になっていれば IKS 上にアプリケーションをデプロイするための準備が整ったことになります:
この画面を離れる前に Web 端末の準備もしておきます。この IKS で用意する Kubernetes 環境はローカルマシンの kubectl などから操作することも可能ですが、kubectl の環境を持っていない人でもブラウザ画面から利用できるターミナル機能が用意されており、こちらを使うことでローカルインストールや環境設定も不要で利用することができるようになって便利です。
Web 端末を利用するには IKS 画面右上の「Actions...」と書かれた箇所をクリックし、メニューから「Web 端末」を選択します:
初めてこの操作をした場合はインストールができていないため以下のようなダイアログが表示されます。「インストール」をクリックして数分お待ち下さい:
Web 端末のインストールが出来た後に改めて「Actions...」-「Web 端末」を選択すると、画面内にターミナル機能が現れ、ここから kubectl コマンドや IBM Cloud への命令を実行する ibmcloud コマンドを利用することができるます。画面が小さくて不便な場合は(別タブに)最大化して利用することもできます:
この Web 端末を使って IBM Cloud CR(Container Registry) の名前空間をセットアップしておきます(後で使います)。まず "ibmcloud login" と入力します。IBM ID とパスワードの入力が促されるので入力し、Web 端末で IBM Cloud にログインします:
一度この時点で CR の名前空間一覧を確認しておきます。確認するためのコマンドは "ibmcloud cr namespaces" で、初めて実行した場合は1つも定義されていないという結果となるはずです:
改めて名前空間を作成します。ユニークな名前空間名を指定して "ibmcloud cr namespace-add (名前空間)" を実行します:
名前空間名は他の人が使っているものを指定することはできません(エラーとなります)。自分の場合は "ibmcloud cr namespace dotnsf-ns" と入力しました。実際に実行する場合はここで他の人が使っていないものを指定して実行してください(エラーとなる場合はエラーにならずに実行完了するまで繰り返して実行してください)。
最後に CR の名前一覧表示コマンドを再度実行し、直前のコマンドで作成した名前空間が一覧に含まれていることを確認してください:
自分の上記例ではこんな感じになりました。この名前空間名も後で利用します:
IKS の準備作業はこれで終わりです。
【アプリケーションおよび GitHub の準備】
次に IKS にデプロイするアプリケーションと GitHub 側の準備を行います。まずはデプロイするアプリケーションを準備して Docker 対応(Dockerfile の準備)します。ここは実際に IKS にデプロイして使ってみたいアプリがある場合は個別に用意していただいても構いません。
一応サンプルとしてシンプルな Web アプリケーションを用意しました。自分でアプリケーションを用意しない場合はこちらをお使いください:
https://github.com/dotnsf/hostname_githubactions_iks
このサンプルを使う場合は、まず GitHub にログインした上で上記 URL を開きます。そして画面右上の "fork" を選択し、自分自身のリポジトリとして複製してください:
成功すると https://github.com/XXXXX/hostname_githubactions_iks というリポジトリができあがります(XXXXX 部分は各ユーザー個別の ID 名)。以降はこのリポジトリを使って GitHub Actions を利用します。まずこの URL を指定してリポジトリの内容をローカルに clone しておきます(XXXXX 部分は自分の ID に置き換えて実行してください):
これでサンプルアプリケーションのソースコードがローカルファイルとしてクローンされ、ローカルファイルとして参照することができるようになりました。簡単にアプリケーションの内容を紹介しておくと、このサンプルアプリケーションは Node.js で実装されており、 GET / という HTTP リクエストに対して /etc/hostname ファイルの内容を text/plain でそのまま返すだけの機能を持っています。本体である app.js ファイルの全容は以下(これで全部)で、実質20行足らずの実装です。またポート番号は 8080 番で固定しています:
この app.js と、依存ライブラリや起動コマンドが記述された package.json や、コンテナ対応のための Dockerfile などが含まれたアプリケーションとなっています。
繰り返しますが、実際に IKS にデプロイするアプリケーションは Docker 対応できていれば他のものを使っても構いません。ただしその場合はこのサンプルの .github/ フォルダ以下をまるごとそのアプリケーションプロジェクトにコピーしておいてください(実質的に .github/workflows/iks.yml ファイル1つだけのフォルダで、この iks.yml が Github Actions を IKS で使うためのワークフローを定義しています)。
iks.yml ファイルの中身はこの後で参照しますが、このファイルは Github のプロジェクトのシークレット情報を参照して動くよう定義されています。したがって必要なシークレット情報を Github プロジェクト内にあらかじめ定義しておく必要があります。
そのための設定を行います。 https://github.com/XXXXX/hostname_githubactions_iks を開き、"Settings" タブを選んで左メニューから "Secrets" を選択します。このプロジェクトに設定されたシークレット情報の一覧が表示されますが、最初は空のはずです。ここにシークレット情報を追加するため "New secret" ボタンをクリックします:
シークレット情報は名前(Name)と値(Value)の組で定義します。まずは "IBM_CLOUD_API_KEY" という名前のシークレットを定義します。この値としては上述した IBM Cloud 利用時に作成してダウンロードするかクリップボードに保存した IBM Cloud API Key の値を入力します。入力後に "Add secret" ボタンをクリックして保存します:
同様にしてもう1つ、"ICR_NAMESPACE" という名前で、 IBM Cloud CR の名前空間として作成した名称(上記例では dotnsf-ns ですが、個別に作成した時の値)を入力し、最後に "Add secret" をクリックします:
つまりプロジェクトのシークレット情報として IBM_CLOUD_API_KEY と ICR_NAMESPACE の2つが定義されている状態にします。これで GitHub プロジェクト側の準備は完了です:
最後に Github Actions のワークフロー定義を各自の内容に合わせて書き換えます。プロジェクト内の .github/workflows/iks.yml ファイルをテキストエディタで開きます。なおこのファイルの内容は以下のプロジェクトに含まれて提供されていたものをベースにしています:
https://github.com/IBM/actions-ibmcloud-iks
iks.yml を開き、20 行目以下(env: で始まる行以下)の値を編集します。といっても自分の独自アプリケーションではなく https://github.com/dotnsf/hostname_githubactions_iks からフォークしたプロジェクトのアプリケーションを使う場合はほぼそのままでも動くはずです:
編集の必要な箇所があるとすれば以下です:
ここまでの作業で hostname_githubactions_iks プロジェクト(Github にコミットするプロジェクト)のファイルに変更を加えている場合はこれで準備完了です。加えていない場合はコミットに変化を加えるというだけの目的でいずれかのファイルに挙動に支障のない変更を加えておいてください。例えば README.md ファイルの最後に空の1行を追加する、などでも構いません(苦笑):
これで全ての事前準備が整いました。
【GitHub Actions の実行】
ではこのプロジェクトを Github にコミット&プッシュします:
Push の成功と同時に Github Actions が実行されます。リポジトリのページ(https://github.com/XXXXX/hostname_githubactions_iks )を開き、"Actions" タブを選択すると、コミットコメントの横にクルクル回るアイコンが表示され、Github Actions に定義された内容(iks.yml の内容)に従ってアプリケーションイメージが内部 Docker Hub に登録され、そこから IKS へデプロイされていきます:
しばらくすると一連の作業が完了します。下図のように緑のチェックマークが表示されていればコマンドが成功しています(赤いバツは失敗):
この箇所をクリックすることでワークフローで実行された内容の詳細を確認したり、(失敗している場合は)どこで失敗しているかを確認することもできます:
この時点でアプリケーションは IKS 内にデプロイされ動いており、パブリックに公開されています。では実際に動いているアプリケーションにアクセスしてみたいのですが、そのためにはアクセスするための情報(IP アドレスおよびポート番号)を見つける必要があります。
まず公開されているパブリック IP アドレスは IBM Cloud ログイン後のダッシュボードから確認することができます。作成した IKS のワーカーノードを表示し、稼働しているサービスのパブリック IP を確認します。これが外部アクセス用の公開 IP アドレスとなっています:
またポート番号は Web 端末から "kubectl get svc" を実行し、サービス名(iks.yml で指定したデプロイ名、上述の例だと hostname)の PORT(S) 列を参照します。 "80:*****/TCP" と表示されている ***** 部分(下図の場合は 32284)がサービスにアクセスするためのポート番号となります:
これらを組み合わせてウェブブラウザまたは curl コマンドなどで http://(IP アドレス):(ポート番号) にアクセスします。下図の例では http://173.193.112.74:32284/ へアクセスしています。またその実行結果として(コンテナの /etc/hostname の中身である hostname-59cb7b958f-lwv52 という値が表示されています。この結果は実行環境によって異なりますが、実際に稼働しているコンテナから取得した値となっています)。実際の稼働環境にアクセスして挙動を確認することもできました:
この時点で IKS 上で稼働しているので、インスタンスのスケールイン/スケールアウトといった操作も可能です。
またこの状態から更にアプリケーションのソースコードを改良するなどした上で、再度 git commit & git push すると同じワークフロープロセスが動き、自動的に IKS 内に最新コードのアプリケーションがデプロイされる、という CI/CD 環境が構築できました。
【デプロイしたポッド等を削除する場合】
最後に環境を削除する手順を紹介します。IKS そのものごと削除する場合は(IBM Cloud のメニューから IKS ごと削除すればよいので)ある意味で簡単ですが、IKS を残して IKS 内にデプロイしたアプリケーション環境を削除する場合の手順を紹介します。
まず Web 端末で "kubectl get all" を実行して、ポッドやサービス、デプロイメントの情報を確認します:
この実行結果から hostname 関連のポッド、サービス、デプロイメントを削除します。Web 端末で続けて以下のコマンドを実行します(service/kubernetes のサービスは IKS そのものなので削除しないよう気をつけてください):
最後にもう一度 "kubectl get all" を実行して、hostname 関連のものが残っていないことを確認します:
上記のような結果になれば無事に削除できました。
【何をする?】
簡単に言うと、GitHub のリポジトリにアプリケーションのソースコードをコミット&プッシュすると、その最新コードのアプリケーションが IBM Cloud 内の Kubernetes サービスへ自動デプロイされて公開される、ということを GitHub 内の機能だけで実現します。
なお、GitHub Actions は GitHub の無料アカウントで使える機能であることに加え、IBM Cloud の IKS も(クレジットカード登録が必要な BASIC アカウントに切り替える必要はありますが)Kubernetes のシングルワーカーノードが 30 日間無料で利用できます。 以下に紹介する内容は全て無料で試すことができる内容です。
では以下に IKS の準備、GitHub の準備に続けて実際にアプリケーションコードをコミットして IKS 上で動かす所までの手順を紹介します。
【IKS の準備】
IBM Cloud で IKS サービスを作成します。IBM Cloud にログインします。ライトアカウントの場合は IKS が利用できないため、クレジットカードを登録して BASIC アカウントに切り替えるか、または新たにアカウントを作成して BASIC アカウントに切り替える必要があります。
BASIC アカウントでログイン後、画面右上の「リソースの作成」ボタンをクリックします:
作成するサービスを一覧から選択します。画面左メニューから「サービス」-「コンピュート」を選択し、画面右の一覧から "Kubernetes Service(以下 IKS)" を選択します:
IKS は有償版と無償版(30日経過後に削除)があります。以下は無償版である「無料クラスター」を選択している想定で紹介を続けます。クラスター名は "mycluster" 、リソースグループは "Default"(いずれも既定値)として画面右の「作成」ボタンをクリックします:
ここから IKS 環境の作成が始まります。操作できる状態になるまでしばらく(数10分程度)かかります:
この IKS の準備をしている時間を使って、この後の作業で利用する API キーを用意しておきます。画面右上のメニューから「管理」を選び、「アクセス(IAM)」を右クリックしてリンクを新しいタブで開く形で(つまり別ウィンドウや別タブで開く形で)選択します:
別ウィンドウでアクセス設定画面が開いたら、画面左メニューで「API キー」を選び、「IBM Cloud API キーの作成」ボタンをクリックします:
ダイアログが表示されるので API キーの名称(任意ですが、例えば "API Key for GitHub Actions" など)を入力して「作成」します:
正しく実行できると以下のような画面になります。作成された API キーはマスクされ、表示されていません。この画面をこのまま閉じてしまうと作成された API キーの内容を再度確認することはできなくなるため、ファイルでダウンロードしておくか、クリップボードにコピーしておくか、目のアイコンをクリックして、マスクを外して表示し、その内容をどこかに保存しておく必要があります:
目のアイコンをクリックするとマスクがはずれ、API キーの値を確認することができます。繰り返しますが、このダイアログを消すと API キーを再確認することはできません。忘れてしまった場合は再度 API キーを新規作成する必要がある点に注意してください。なんらかの方法で API キーの内容を再確認できるようこの内容を保存しておきます(後で使います):
あらためて IKS サービスの作成状況を確認しておきましょう。「ファイナライズ中」と出ていればあと少しです。。。:
しばらく待って全ての準備が完了すると、下図のように「通常」というステータスに変わります。この状態になっていれば IKS 上にアプリケーションをデプロイするための準備が整ったことになります:
この画面を離れる前に Web 端末の準備もしておきます。この IKS で用意する Kubernetes 環境はローカルマシンの kubectl などから操作することも可能ですが、kubectl の環境を持っていない人でもブラウザ画面から利用できるターミナル機能が用意されており、こちらを使うことでローカルインストールや環境設定も不要で利用することができるようになって便利です。
Web 端末を利用するには IKS 画面右上の「Actions...」と書かれた箇所をクリックし、メニューから「Web 端末」を選択します:
初めてこの操作をした場合はインストールができていないため以下のようなダイアログが表示されます。「インストール」をクリックして数分お待ち下さい:
Web 端末のインストールが出来た後に改めて「Actions...」-「Web 端末」を選択すると、画面内にターミナル機能が現れ、ここから kubectl コマンドや IBM Cloud への命令を実行する ibmcloud コマンドを利用することができるます。画面が小さくて不便な場合は(別タブに)最大化して利用することもできます:
この Web 端末を使って IBM Cloud CR(Container Registry) の名前空間をセットアップしておきます(後で使います)。まず "ibmcloud login" と入力します。IBM ID とパスワードの入力が促されるので入力し、Web 端末で IBM Cloud にログインします:
$ ibmcloud login
一度この時点で CR の名前空間一覧を確認しておきます。確認するためのコマンドは "ibmcloud cr namespaces" で、初めて実行した場合は1つも定義されていないという結果となるはずです:
$ ibmcloud cr namespaces
改めて名前空間を作成します。ユニークな名前空間名を指定して "ibmcloud cr namespace-add (名前空間)" を実行します:
$ ibmcloud cr namespace-add (名前空間名)
名前空間名は他の人が使っているものを指定することはできません(エラーとなります)。自分の場合は "ibmcloud cr namespace dotnsf-ns" と入力しました。実際に実行する場合はここで他の人が使っていないものを指定して実行してください(エラーとなる場合はエラーにならずに実行完了するまで繰り返して実行してください)。
最後に CR の名前一覧表示コマンドを再度実行し、直前のコマンドで作成した名前空間が一覧に含まれていることを確認してください:
$ ibmcloud cr namespaces
自分の上記例ではこんな感じになりました。この名前空間名も後で利用します:
IKS の準備作業はこれで終わりです。
【アプリケーションおよび GitHub の準備】
次に IKS にデプロイするアプリケーションと GitHub 側の準備を行います。まずはデプロイするアプリケーションを準備して Docker 対応(Dockerfile の準備)します。ここは実際に IKS にデプロイして使ってみたいアプリがある場合は個別に用意していただいても構いません。
一応サンプルとしてシンプルな Web アプリケーションを用意しました。自分でアプリケーションを用意しない場合はこちらをお使いください:
https://github.com/dotnsf/hostname_githubactions_iks
このサンプルを使う場合は、まず GitHub にログインした上で上記 URL を開きます。そして画面右上の "fork" を選択し、自分自身のリポジトリとして複製してください:
成功すると https://github.com/XXXXX/hostname_githubactions_iks というリポジトリができあがります(XXXXX 部分は各ユーザー個別の ID 名)。以降はこのリポジトリを使って GitHub Actions を利用します。まずこの URL を指定してリポジトリの内容をローカルに clone しておきます(XXXXX 部分は自分の ID に置き換えて実行してください):
$ git clone https://github.com/XXXXX/hostname_githubactions_iks
これでサンプルアプリケーションのソースコードがローカルファイルとしてクローンされ、ローカルファイルとして参照することができるようになりました。簡単にアプリケーションの内容を紹介しておくと、このサンプルアプリケーションは Node.js で実装されており、 GET / という HTTP リクエストに対して /etc/hostname ファイルの内容を text/plain でそのまま返すだけの機能を持っています。本体である app.js ファイルの全容は以下(これで全部)で、実質20行足らずの実装です。またポート番号は 8080 番で固定しています:
//. app.js var express = require( 'express' ), fs = require( 'fs' ), app = express(); app.get( '/', function( req, res ){ res.contentType( 'text/plain; charset=utf-8' ); fs.readFile( '/etc/hostname', "utf-8", function( err, text ){ if( err ){ res.write( JSON.stringify( err, 2, null ) ); res.end(); }else{ res.write( text ); res.end(); } }); }); var port = 8080; app.listen( port ); console.log( "server starting on " + port + " ..." );
この app.js と、依存ライブラリや起動コマンドが記述された package.json や、コンテナ対応のための Dockerfile などが含まれたアプリケーションとなっています。
繰り返しますが、実際に IKS にデプロイするアプリケーションは Docker 対応できていれば他のものを使っても構いません。ただしその場合はこのサンプルの .github/ フォルダ以下をまるごとそのアプリケーションプロジェクトにコピーしておいてください(実質的に .github/workflows/iks.yml ファイル1つだけのフォルダで、この iks.yml が Github Actions を IKS で使うためのワークフローを定義しています)。
iks.yml ファイルの中身はこの後で参照しますが、このファイルは Github のプロジェクトのシークレット情報を参照して動くよう定義されています。したがって必要なシークレット情報を Github プロジェクト内にあらかじめ定義しておく必要があります。
そのための設定を行います。 https://github.com/XXXXX/hostname_githubactions_iks を開き、"Settings" タブを選んで左メニューから "Secrets" を選択します。このプロジェクトに設定されたシークレット情報の一覧が表示されますが、最初は空のはずです。ここにシークレット情報を追加するため "New secret" ボタンをクリックします:
シークレット情報は名前(Name)と値(Value)の組で定義します。まずは "IBM_CLOUD_API_KEY" という名前のシークレットを定義します。この値としては上述した IBM Cloud 利用時に作成してダウンロードするかクリップボードに保存した IBM Cloud API Key の値を入力します。入力後に "Add secret" ボタンをクリックして保存します:
同様にしてもう1つ、"ICR_NAMESPACE" という名前で、 IBM Cloud CR の名前空間として作成した名称(上記例では dotnsf-ns ですが、個別に作成した時の値)を入力し、最後に "Add secret" をクリックします:
つまりプロジェクトのシークレット情報として IBM_CLOUD_API_KEY と ICR_NAMESPACE の2つが定義されている状態にします。これで GitHub プロジェクト側の準備は完了です:
最後に Github Actions のワークフロー定義を各自の内容に合わせて書き換えます。プロジェクト内の .github/workflows/iks.yml ファイルをテキストエディタで開きます。なおこのファイルの内容は以下のプロジェクトに含まれて提供されていたものをベースにしています:
https://github.com/IBM/actions-ibmcloud-iks
iks.yml を開き、20 行目以下(env: で始まる行以下)の値を編集します。といっても自分の独自アプリケーションではなく https://github.com/dotnsf/hostname_githubactions_iks からフォークしたプロジェクトのアプリケーションを使う場合はほぼそのままでも動くはずです:
編集の必要な箇所があるとすれば以下です:
変数名 | 設定内容 | 既定値 |
---|---|---|
IBM_CLOUD_REGION | IBM Cloud で利用する IKS のリージョン(地域) | us-south |
REGISTRY_HOSTNAME | 内部で利用する Docker Hub のホスト名 | us.icr.io |
IMAGE_NAME | Docker イメージを保存する時の名称 | hostname |
IKS_CLUSTER | IKS 作成時に指定したクラスタ名 | mycluster |
DEPLOYMENT_NAME | Docker イメージを IKS にデプロイする時の DEPLOYMENT の名称 | hostname |
PORT | アプリケーションが HTTP アクセス時に LISTEN するポートの番号 | 8080 |
ここまでの作業で hostname_githubactions_iks プロジェクト(Github にコミットするプロジェクト)のファイルに変更を加えている場合はこれで準備完了です。加えていない場合はコミットに変化を加えるというだけの目的でいずれかのファイルに挙動に支障のない変更を加えておいてください。例えば README.md ファイルの最後に空の1行を追加する、などでも構いません(苦笑):
これで全ての事前準備が整いました。
【GitHub Actions の実行】
ではこのプロジェクトを Github にコミット&プッシュします:
$ cd hostname_githubactions_iks $ git add . $ git commit -m 'README.md updated.' $ git push
Push の成功と同時に Github Actions が実行されます。リポジトリのページ(https://github.com/XXXXX/hostname_githubactions_iks )を開き、"Actions" タブを選択すると、コミットコメントの横にクルクル回るアイコンが表示され、Github Actions に定義された内容(iks.yml の内容)に従ってアプリケーションイメージが内部 Docker Hub に登録され、そこから IKS へデプロイされていきます:
しばらくすると一連の作業が完了します。下図のように緑のチェックマークが表示されていればコマンドが成功しています(赤いバツは失敗):
この箇所をクリックすることでワークフローで実行された内容の詳細を確認したり、(失敗している場合は)どこで失敗しているかを確認することもできます:
この時点でアプリケーションは IKS 内にデプロイされ動いており、パブリックに公開されています。では実際に動いているアプリケーションにアクセスしてみたいのですが、そのためにはアクセスするための情報(IP アドレスおよびポート番号)を見つける必要があります。
まず公開されているパブリック IP アドレスは IBM Cloud ログイン後のダッシュボードから確認することができます。作成した IKS のワーカーノードを表示し、稼働しているサービスのパブリック IP を確認します。これが外部アクセス用の公開 IP アドレスとなっています:
またポート番号は Web 端末から "kubectl get svc" を実行し、サービス名(iks.yml で指定したデプロイ名、上述の例だと hostname)の PORT(S) 列を参照します。 "80:*****/TCP" と表示されている ***** 部分(下図の場合は 32284)がサービスにアクセスするためのポート番号となります:
これらを組み合わせてウェブブラウザまたは curl コマンドなどで http://(IP アドレス):(ポート番号) にアクセスします。下図の例では http://173.193.112.74:32284/ へアクセスしています。またその実行結果として(コンテナの /etc/hostname の中身である hostname-59cb7b958f-lwv52 という値が表示されています。この結果は実行環境によって異なりますが、実際に稼働しているコンテナから取得した値となっています)。実際の稼働環境にアクセスして挙動を確認することもできました:
この時点で IKS 上で稼働しているので、インスタンスのスケールイン/スケールアウトといった操作も可能です。
またこの状態から更にアプリケーションのソースコードを改良するなどした上で、再度 git commit & git push すると同じワークフロープロセスが動き、自動的に IKS 内に最新コードのアプリケーションがデプロイされる、という CI/CD 環境が構築できました。
【デプロイしたポッド等を削除する場合】
最後に環境を削除する手順を紹介します。IKS そのものごと削除する場合は(IBM Cloud のメニューから IKS ごと削除すればよいので)ある意味で簡単ですが、IKS を残して IKS 内にデプロイしたアプリケーション環境を削除する場合の手順を紹介します。
まず Web 端末で "kubectl get all" を実行して、ポッドやサービス、デプロイメントの情報を確認します:
この実行結果から hostname 関連のポッド、サービス、デプロイメントを削除します。Web 端末で続けて以下のコマンドを実行します(service/kubernetes のサービスは IKS そのものなので削除しないよう気をつけてください):
$ kubectl delete deployment hostname $ kubectl delete service hostname $ kubectl delete pod hostname-59cb7b958f-lwv52
最後にもう一度 "kubectl get all" を実行して、hostname 関連のものが残っていないことを確認します:
上記のような結果になれば無事に削除できました。