IBM Cloud から提供されている 30 日間無料 Kubernetes サービスIBM Kubernetes Service 、以下 "IKS")環境を使って利用することのできるコンテナイメージを1日に1個ずつ 30 日間連続で紹介していきます。

環境のセットアップや制約事項については Day0 のこちらの記事を参照してください。

Day 25 からはアプリケーション系コンテナとその GUI ツールを中心に紹介してます。残り2日となった Day 29 はウェブコンテンツ管理システムの1つ Drupal イメージをデプロイする例を紹介します。


【イメージの概要】
ブログなどのウェブコンテンツを管理・編集・公開するシステムです。

Drupal の動作時にはデータベースが必要なのですが、今回は MySQL を使う方法を紹介します。MySQL 単体のデプロイについては Day 6 でも紹介しているので、必要に応じて参照してください。


【イメージのデプロイ】
まずはこれら2つのファイルを自分の PC にダウンロードしてください:
https://raw.githubusercontent.com/dotnsf/yamls_for_iks/main/mysql.yaml
https://raw.githubusercontent.com/dotnsf/yamls_for_iks/main/drupal.yaml

前者が MySQL 用、後者が Drupal 用のデプロイファイルです(両方使います)。後者の Drupal 用デプロイファイルは編集不要ですが、前者の MySQL 用デプロイファイルは Day 6 で行ったものと同様の編集が必要です。mysql.yaml ファイルをテキストエディタで開いて、 "MYSQL_" で始まる4箇所の env.name の value 値を変更してください。それぞれの具体的な意味は以下の通りです(初期値として指定されている値のまま動かすことも可能ですが、安全のためなるべく変更してください):
・MYSQL_ROOT_PASSWORD : 管理者パスワード(初期値 P@ssw0rd)
・MYSQL_DATABASE : デプロイと同時に作成するデータベースの名前(初期値 mydb)
・MYSQL_USER : デプロイと同時に作成するデータベースを利用するユーザー名(初期値 user1)
・MYSQL_PASSWORD : デプロイと同時に作成するデータベースを利用するパスワード(初期値 password1)

ではこのダウンロード&編集した2つの yaml ファイルを指定してデプロイします。以下のコマンドを実行する前に Day 0 の内容を参照して ibmcloud CLI ツールで IBM Cloud にログインし、クラスタに接続するまでを済ませておいてください。

そして以下のコマンドを実行します:
$ kubectl apply -f mysql.yaml

$ kubectl apply -f drupal.yaml

以下のコマンドで MySQL 関連の Deployment, Service, Pod, Replicaset が1つずつ生成されたことと、サービスが 30306 番ポートで公開されていること、そして Drupal 関連も同様に Deployment, Service, Pod, Replicaset が1つずつ生成され、サービスが 30080 番ポートで公開されていることを確認します:
$ kubectl get all

NAME                          READY   STATUS    RESTARTS   AGE
pod/drupal-5dcb945df7-rwqxc   1/1     Running   0          57s
pod/mysql-5bd77967b-2mhxl     1/1     Running   0          74s

NAME                  TYPE        CLUSTER-IP      EXTERNAL-IP   PORT(S)          AGE
service/drupal        NodePort    172.21.92.228   <none>        80:30080/TCP     58s
service/kubernetes    ClusterIP   172.21.0.1      <none>        443/TCP          27d
service/mysqlserver   NodePort    172.21.111.48   <none>        3306:30306/TCP   75s

NAME                     READY   UP-TO-DATE   AVAILABLE   AGE
deployment.apps/drupal   1/1     1            1           59s
deployment.apps/mysql    1/1     1            1           76s

NAME                                DESIRED   CURRENT   READY   AGE
replicaset.apps/drupal-5dcb945df7   1         1         1       59s
replicaset.apps/mysql-5bd77967b     1         1         1       76s

この後に実際にサービスを利用するため、以下のコマンドでワーカーノードのパブリック IP アドレスを確認します(以下の例であれば 161.51.204.190):
$ ibmcloud ks worker ls --cluster=mycluster-free
OK
ID                                                       パブリック IP    プライベート IP   フレーバー   状態     状況    ゾーン   バージョン
kube-c3biujbf074rs3rl76t0-myclusterfr-default-000000df   169.51.204.190   10.144.185.144    free         normal   Ready   mil01    1.20.7_1543*

つまりこの時点で(上述の結果であれば)アプリケーションは http://169.51.204.190:30080/ で稼働している、ということになります。ウェブブラウザを使って、アプリケーションの URL(上述の方法で確認した URL)にアクセスしてみます:
drupal1


無事に Drupal の初期設定画面が表示されました。とりあえず IKS 上で(MySQL と)Drupal が起動できているようです。あとは今回の環境向けの設定をするだけです。

基本は普通に進めていけばいいのですが注意点はデータベース構成部分です。今回の環境用に用意した MySQL に接続するので mysql.yaml で設定した内容を入力する必要がある点に注意してください。高度なオプションを有効にして、ポート番号も 30306 を指定する必要があります:
drupal2


あとはそのまま進めていって・・・
drupal3


最後にサイトの環境情報を入力して保存すれば準備完了です:
drupal4


無事に IKS 内に MySQL + Drupal 環境を作ることができました:
drupal5


コンテンツフォルダを共有していないので、インスタンス数を2以上に増やして使うことはできませんが、とりあえず Drupal が動く環境を作ることができました。

【YAML ファイルの解説】
Drupal の YAML ファイルはこちらを使っています(MySQL の YAML ファイルについては Day 6 参照):
apiVersion: v1
kind: Service
metadata:
  name: drupal
spec:
  selector:
    app: drupal
  ports:
  - port: 80
    protocol: TCP
    targetPort: 80
    nodePort: 30080
  type: NodePort
---
apiVersion: apps/v1
kind: Deployment
metadata:
  name: drupal
spec:
  replicas: 1
  selector:
    matchLabels:
      app: drupal
  template:
    metadata:
      labels:
        app: drupal
    spec:
      containers:
      - name: drupal
        image: drupal
        ports:
        - containerPort: 80

Deployment 1つと、Service 1つのシンプルな YAML ファイルです。一応解説を加えておきます。アプリケーションそのものは 80 番ポートで動作するように作られているため、NodePort 30080 番を指定して、外部からは 30080 番ポートでアクセスできるようにしています(NodePort として指定可能な番号の範囲は 30000 ~ 32767 です、指定しない場合は空いている番号がランダムに割り振られます)。また ReplicaSet は1つだけで作りました。


デプロイしたコンテナイメージを削除する場合はデプロイ時に使った YAML ファイルを再度使って、以下のコマンドを実行します。不要であれば削除しておきましょう:
$ kubectl delete -f drupal.yaml

$ kubectl delete -f mysql.yaml


【紹介したイメージ】
https://hub.docker.com/_/drupal


【紹介記録】

Dayカテゴリーデプロイ内容
0準備準備作業
1ウェブサーバーhostname
2Apache HTTP
3Nginx
4Tomcat
5Websphere Liberty
6データベースMySQL
7phpMyAdmin
8PostgreSQL
9pgAdmin4
10MongoDB
11Mongo-Express
12Redis
13RedisCommander
14ElasticSearch
15Kibana
16CouchDB
17CouchBase
18HATOYA
19プログラミングNode-RED
20Scratch
21Eclipse Orion
22Swagger Editor
23R Studio
24Jenkins
25アプリケーションFX
262048
27DOS Box
28VNC Server(Lubuntu)
29Drupal
30WordPress