IBM Cloud から提供されている 30 日間無料 Kubernetes サービスIBM Kubernetes Service 、以下 "IKS")環境を使って利用することのできるコンテナイメージを1日に1個ずつ 30 日間連続で紹介していきます。

環境のセットアップや制約事項については Day0 のこちらの記事を参照してください。

Day 19 からはプログラミング・開発系コンテナとその GUI ツールを中心に紹介してます。このカテゴリーでは最終日となる Day 24 は CI(Continuous Integration) や CD(Continuous Delivery) と呼ばれる継続的なインテグレーション/デリバリーを実現するツールの1つである Jenkins イメージをデプロイする例を紹介します。
logo_jenkins



【イメージの概要】
プログラミングによって開発したソフトウェアを、実際の利用環境にデプロイする、という作業はソフトウェアのメンテナンス性の高まりと同時に重要性が増してきました。利用環境は物理サーバーだったり、クラウドサーバーだったり、コンテナ環境だったりして、その違いを意識する必要がある上に、いかにしてサービスを止めずに利用環境を更新するか、という課題もあります。
そういった複雑な作業をあらかじめ定義して自動化し、すばやく安定した環境に更新するためのツールとして CI/CD が注目されています。Jenkins はそんな CI/CD を実現するツールです。

また詳しくは後述しますが、この Jenkins イメージはアプリケーションとして利用できるようになるまでの手順が少し複雑です。実際に作成したコンテナのコンソールからでないと確認できない情報を使ったりするので、k8s(IKS) のダッシュボード周りの使い方についても学習する機会となっています。


【イメージのデプロイ】
まずはこちらのファイルを自分の PC にダウンロードしてください:
https://raw.githubusercontent.com/dotnsf/yamls_for_iks/main/jenkins.yaml

今回の Jenkins も特にパラメータ指定不要で、そのままデプロイすることができます。以下のコマンドを実行する前に Day 0 の内容を参照して ibmcloud CLI ツールで IBM Cloud にログインし、クラスタに接続するまでを済ませておいてください。

そして以下のコマンドを実行します:
$ kubectl apply -f jenkins.yaml

以下のコマンドで Jenkins 関連の Deployment, Service, Pod, Replicaset が1つずつ生成されたことと、サービスが 30080 番ポート及び 30500 番ポートで公開されていることを確認します:
$ kubectl get all

NAME                           READY   STATUS    RESTARTS   AGE
pod/jenkins-8646cd685c-2kpcg   1/1     Running   0          26s

NAME                 TYPE        CLUSTER-IP       EXTERNAL-IP   PORT(S)                          AGE
service/jenkins      NodePort    172.21.211.147   <none>        8080:30080/TCP,50000:30500/TCP   28s
service/kubernetes   ClusterIP   172.21.0.1       <none>        443/TCP                          27d

NAME                      READY   UP-TO-DATE   AVAILABLE   AGE
deployment.apps/jenkins   1/1     1            1           27s

NAME                                 DESIRED   CURRENT   READY   AGE
replicaset.apps/jenkins-8646cd685c   1         1         1       28s

この後に実際にサービスを利用するため、以下のコマンドでワーカーノードのパブリック IP アドレスを確認します(以下の例であれば 161.51.204.190):
$ ibmcloud ks worker ls --cluster=mycluster-free
OK
ID                                                       パブリック IP    プライベート IP   フレーバー   状態     状況    ゾーン   バージョン
kube-c3biujbf074rs3rl76t0-myclusterfr-default-000000df   169.51.204.190   10.144.185.144    free         normal   Ready   mil01    1.20.7_1543*

つまりこの時点で(上述の結果であれば)アプリケーションは http://169.51.204.190:30080/ で稼働している、ということになります。ウェブブラウザを使って、アプリケーションの URL(上述の方法で確認した URL)にアクセスしてみます:
jenkins1


"Unlock Jenkins" というメッセージが表示されました。なんらかのアプリケーションが動いていることは間違いないのですが、このままだと Jenkins 本来の使い方をする意味で先に進めません。

実はこの Jenkins イメージはこの 30 回紹介シリーズの中でもコンテナ稼働後のセットアップが複雑な部類に入ります。以下でその手順を紹介します。

上画面のメッセージにも書かれているのですが、ここでは Jenkins を使うための管理パスワードを入力する必要があります。そしてそのパスワードはコンテナ内の /var/jenkins_home/secrets/initialAdminPassword というファイルに書かれているようです。つまりまずはコンテナからこのファイルの内容を確認する必要がありそうです。 ではこのファイルの内容を k8s ダッシュボードコンソールからログインして確認してみましょう。

ウェブブラウザで IBM Cloud にログインして、作成した IKS サービスを開きます。画面右上に「Kubernetes ダッシュボード」と書かれた青いボタンがあるので、ここをクリックします:
jenkins2


すると k8s クラスタのダッシュボード画面が表示されます:
jenkins3


画面左のメニューから「ポッド」を選択し、ポッドの一覧から先程作った jenkins に関係あるものを探して、画面右の三点メニューから「実行」を選択します:
jenkins4



するとこのポッドのコンソールが開き、シェルでログインした状態になります。k8s ではこの方法で実行中のコンテナにログインすることができます:
jenkins5


このシェル内で $ cat /var/jenkins_home/secrets/initialAdminPassword を実行して、このファイルの内容を確認します:
jenkins6


確認した内容を先程の "Unlock Jenkins" の画面に入力して、"Continue" をクリックします:
jenkins1


正しいパスワードが入力されるとプラグインのカスタマイズ画面に移動します。とりあえず "Install suggested plugins" で推奨プラグインを全部インストールします:
jenkins1


インストール中の画面です。ここで少し時間がかかります:
jenkins2


プラグインのインストールが終わると管理者ユーザーの作成に移ります:
jenkins1


そして URL を指定して "Save" すると・・・
jenkins2


"Jenkins is ready!" で準備完了です:
jenkins3


無事にセットアップが完了し Jenkins が利用できるようになりました。ちょっと複雑でしたが、コンソールも併用してのセットアップが完了しました。ここまでできるとちょっと制約のあるこの環境でも使えるコンテナイメージは多そうですね:
jenkins4




【YAML ファイルの解説】
YAML ファイルはこちらを使っています:
apiVersion: v1
kind: Service
metadata:
  name: jenkins
spec:
  selector:
    app: jenkins
  ports:
  - port: 8080
    name: port0
    protocol: TCP
    targetPort: 8080
    nodePort: 30080
  - port: 50000
    name: port1
    protocol: TCP
    targetPort: 50000
    nodePort: 30500
  type: NodePort
---
apiVersion: apps/v1
kind: Deployment
metadata:
  name: jenkins
spec:
  replicas: 1
  selector:
    matchLabels:
      app: jenkins
  template:
    metadata:
      labels:
        app: jenkins
    spec:
      containers:
      - name: jenkins
        image: jenkins/jenkins
        ports:
        - containerPort: 8080
        - containerPort: 50000

Deployment 1つと、Service 1つのシンプルな YAML ファイルです。一応解説を加えておきます。アプリケーションそのものは 8080 番および 50000 番ポートで動作するように作られているため、NodePort 30080 番と 300500 番を指定して、外部からは 30080 番ポートでアクセスできるようにしています(NodePort として指定可能な番号の範囲は 30000 ~ 32767 です、指定しない場合は空いている番号がランダムに割り振られます)。また ReplicaSet は1つだけで作りました。


デプロイしたコンテナイメージを削除する場合はデプロイ時に使った YAML ファイルを再度使って、以下のコマンドを実行します。不要であれば削除しておきましょう:
$ kubectl delete -f jenkins.yaml


【紹介したイメージ】
https://hub.docker.com/r/jenkins/jenkins


【紹介記録】
Dayカテゴリーデプロイ内容
0準備準備作業
1ウェブサーバーhostname
2Apache HTTP
3Nginx
4Tomcat
5Websphere Liberty
6データベースMySQL
7phpMyAdmin
8PostgreSQL
9pgAdmin4
10MongoDB
11Mongo-Express
12Redis
13RedisCommander
14ElasticSearch
15Kibana
16CouchDB
17CouchBase
18HATOYA
19プログラミングNode-RED
20Scratch
21Eclipse Orion
22Swagger Editor
23R Studio
24Jenkins
25アプリケーションFX
262048
27DOS Box
28VNC Server(Lubuntu)
29Drupal
30WordPress