PC-DOS 環境のエミュレータである DOSBOX を日本語化した上で、 FEP(Front End Processor) と呼ばれる日本語入力環境を有効にしてみました。同じことができる環境にある人は少ないと思いますが、同じ手順を紹介した記事をネット上で見つけることができなかったので記録目的としてもブログエントリにしてみました。

まず DOSBOX は PC-DOS のエミュレータ・ソフトウェアです。DOSBOX 自体は MacOS 版や Linux 版も存在していますが、以下は Windows 10 環境を前提とした紹介です。64bit OS である Windows10 の中で 16bit OS の PC-DOS をエミュレートするものです。なおコマンドラインツールとしては Windows10 標準の「コマンドプロンプト」もありますし、同様のコマンドが実行できるようになってはいますが、コマンドプロンプトはあくまで 64bit 環境で動くものであって、16bit 時代のアプリケーションが動くわけではありません。試しにコマンドプロンプト内で 16bit アプリケーションを無理やり実行すると、こんなメッセージが表示されます(動きません):
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Windows10 環境内で、この 16bit 時代の DOS アプリケーションを動かすには PC-DOS のエミュレータが必要になります。PC-DOS 自体を所有しているのであれば仮想化環境を使ってその中で PC-DOS をインストールすることでも実現できます。実際、自分はしばらくこの方法で PC-DOS 環境を残していました。特に Microsoft Virtual-PC は EMM386 までサポートしていて、コンベンショナルメモリを多く必要とするアプリまで動かすことができていました。が、Windows10 になって Microsoft Virtual-PC は動かなくなってしまいました。。現在はメモリの制約を受けながら KVM 内でひっそりと動かしています。。


※余談ですが自分は PC-DOS の頃のゲームが今でも好きで、DOOMEpic Pinball などは多く流通していたシェアウェア版ではなく、eBay などから有料版を購入することもありました。今でもたまに遊んでいます:
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(↑ Epic Pinball 有料版でのみ遊べるテーブル "CYBORGIRL" 、このために $60 で無制限版を購入)


ただこれらの仮想マシンを使った方法は(PC-DOS のメディアの入手が必要になることからも)少々ハードルが高いです。 そういった場合には DOSBOX は有効な選択肢となります。DOSBOX は英語版の DOS 互換 OS が用意(内蔵)されたソフトウェアエミュレータで、ホスト PC 内に 16bit アプリケーションを詰め込んだフォルダを用意しておけば、そのフォルダをマウントすることで DOSBOX の環境内でもこれらのアプリケーションを利用することができる、というものです。

一方、DOSBOX で提供されているのはあくまで「英語版の」DOS 互換 OS 環境です。キーボード配置に限ってはこちらから日本語キーボードに対応したものをダウンロードできますが、日本語の表示ができるわけではありませんし、日本語の入力となると上述の FEP のソフトウェアを用意した上で更に別の設定が必要になります。 自分は上記のようにもともと Virtual-PC や KVM 内に PC-DOS (7.0) 環境を持っていて、そこにはゲームだけでなく、エディタや日本語 FEP といった有償版のソフトウェア環境も残していたので、それらを使って DOSBOX の日本語入力環境を整えてみました。以下、その手順の紹介です。


手順としては大きく3つです。(1)まずは上述の DOSBOX を導入します。

(2)次に専用のフォルダを1つ作成して、その中に DOSBOX から利用するための DOS 用ツールをまとめていれておきます。自分の場合は c:\myapps\DOSBOX\ というフォルダを作り、その下に日本語フォントを含む表示&入力用のツール類を入れておきます:
(c:\myapps\DOSBOX\ 以下の主なフォルダ)
・DOS\ : $FONT.SYS など、後述の PC-DOS 日本語フォント表示用ツールをまとめていれておくフォルダ
・DOSJ\ : ADDDEV, DISPV, CHEJ など、後述の日本語モードで動かすためのツールをまとめていれておくフォルダ
・VZ\ : Vz Editor のインストールフォルダ
・WX2\ : WX2 のファイル群を入れておくフォルダ
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ちなみに FEP は自分が愛用していたエー・アイ・ソフトの WX2 を使う前提で以下を紹介します。

(3)最後にdosbox.conf ファイルの最後([autoexec] と書かれた行より下)に以下を追加します:
mount c c:\myapps\DOSBOX
c:

\DOSJ\adddev c:\DOSFONT.SYS
\DOSJ\DISPV
\DOSJ\CHEJ JP
\DOSJ\VMX 70

set path=c:\DOSJ;c:\DOS;c:\BIN;c:\VZ

\DOSJ\adddev c:\WX2.SYS

1行目の mount c c:\myapps\DOSBOX が実行されるとホスト( Windows10 )環境での c:\myapps\DOSBOX フォルダを、DOSBOX 環境での c ドライブ(のルートディレクトリ)としてマウントし、このフォルダ以下にあるツール類が DOSBOX から利用できるようになります。

なお、このファイル内で2箇所 \DOSJ\adddev コマンドが実行されています。1つ目は C:\DOSFONT.SYS ファイルをパラメータに指定していますが、この C:\DOSFONT.SYS ファイルの中身は以下のようにしています。もともとの PC-DOS に含まれていたツール類を使って、DOSBOX 内で日本語を表示できるようフォントやディスプレイモードを設定しています:
DEVICE=C:\DOS\$FONT.SYS
DEVICE=C:\DOS\SETVER.EXE
DEVICE=C:\DOS\$DISP.SYS
DEVICE=C:\DOS\ANSI.SYS /X
DEVICE=c:\DOS\KKCFUNC.SYS

また2つ目の C:\WX2.SYS ファイルの中身は以下です。WX2 を ATOK7 仕様で利用できるようにデバイスドライバ設定を指定しています:
DEVICE=C:\WX2\WXK.SYS /A5
DEVICE=C:\WX2\WX2A7.SYS /INI=C:\WX2\WX2SYS.INI /A5

この設定にして DOSBOX を起動し、ALT+半角全角キーを押すと WX2 による日本語入力モードに切り替わります:
DOSBOX_WX2

(↑できた!)


なお、DOSBOX 日本語モードで Vz Editor を使える(日本語入力できる)ことは確認できましたが、ファイラーの FD などはファイルを見つけることができませんでした。こちらは使えないようで、DOSBOX の日本語環境下で使える DOS ツールと使えない DOS ツールをある程度選別しておく必要があるように感じています。ここが結構シビアな問題かも。