きっかけはこのツイートでも紹介した、豊島屋の鳩サブレ缶がちょうどラズベリーパイを4つ格納できるような仕切りになっていることに気付いたことでした:
20190117


面白そうなので、本当にラズパイのケースにしてみよう、それもせっかくなのでこの鳩サブレ缶の中だけでクラスタリング環境を作ることに挑戦してみよう、と思いたちました。ちなみに私自身はクラスタ化とか専門ではなく、あまり得意な方ではないです。思いついた時点では構築方法として Docker Swarm か、Kubernetes か、まあその辺りが動けばいいな、くらいに考えていました。。

当初は「さてとりあえずラズパイを4台買って・・」と思っていましたが、冷静に考えるとスイッチングハブとか、USBハブとか、電源周りとか、ラズパイ本体以外でもそこそこのサイズの機器を収納する必要がありそうだと気づきました。というわけで、それらをどこか1つにまとめるとして、ラズパイ本体は3台体制で行けるかな・・・ という想定でお買い物しました:
IMG_3782


購入したモノリスト:
買ったモノ個数目的
Raspberry Pi 3 Model B3クラスタノードになるホスト
マイクロ USB ケーブル上記ラズパイの電源ケーブル
マイクロSDカード(64GB)上記ラズパイのストレージ
ラズパイケースプラスチックの仕切りの上にラズパイ本体を直接載せるのは熱的にまずいかと思ったので・・・
LANケーブル3台のラズパイを同一ネットワークに接続(結局、今回は使わず※)
スイッチングハブ1LANケーブルのハブ(結局、今回は使わず※)
USB ハブ電源ケーブルのハブ(結局、今回は使わず※)


※今回は結局無線 LAN で接続することにしたので有線の LAN ケーブルとハブを使わずに構築しました。また USB ハブは購入したのですが、この USB ハブ1つに3台のラズパイを接続すると電流量が足りませんでした。というわけで別途 USB からの電源変換プラグ3つと、テーブルタップ1つを買い足しています。

上記に含まれていないものとして、マイクロ SD カードにイメージを書き込むための Windows PC と、マイクロ SD カードを読み書きするための USB アダプタ、USB -> 電源プラグの変換アダプタ、各ホストでネットワークが有効になるまでの操作用に LCD モニタ、HDMI ケーブル、USB キーボードと USB マウスを使います(これらは所有していたものをそのまま使います)。加えてケースとなる 18 枚入りの鳩サブレー缶を用意しました。

また構築する環境は最近流行り(遅い?)の Kubernetes 、にしたかったのですが、訳あって Docker Swarm にしました。コンテナ・オーケストレーションとしてはほぼデファクトスタンダートになった Kubernetes を選びたかったのですが、とりあえず 2019/01/21 時点ではマスターノードを初期化する kubeadm init コマンドを実行した際に再現率 100% で Timeout エラーになってしまうようでした。


どうもこの Issue に近い現象だと思っています:
2019012101


ただ Issue そのものは Closed になっていて、でもスレッドを見ていると本当に治っているのかなんとも微妙・・ 一方で成功例も報告されているのでラズパイで発生する環境依存問題なのか、タイミングが悪かったのか・・・ なんとも言えないのですが、仮に Kubernetes の障害であったとしてもその修正を待つのも変なので、Docker Swarm によるクラスタリング環境構築を優先することに決めました。

というわけで、改めて3台のラズパイを使った Docker Swarm 環境の構築を目標に作業を進めてみます:
2019012200



【構成図】
このような最終型を目指すことにします:
2018012201

raspi001, raspi002, raspi003 の3台のラズベリーパイを Docker Swarm でクラスタリングします。raspi001 を管理ノード、raspi002 と raspi003 をワーカーノードとします。



【ラズパイノードの準備】
Docker Swarm 環境の核となる3台のノードをラズパイで作ります。前提として最新版の Raspbian OS をマイクロ SD カードに書き込んで起動し、初回起動時のセットアップは3台ぶん済んでいるものとします。また SSH も有効にしておいてください。そして以下の手順を3台それぞれに対して行います。

【ホスト名の変更】
今回は3台のラズパイに raspi001, raspi002, raspi003 という3つの名前をそれぞれ付与して使いますこのため、まずは各ラズパイのホスト名をそれぞれ変更します。
$ sudo vi /etc/hostname

raspberrypiraspi001  raspberrypi をホスト名に変更して保存


また raspi001, raspi002, raspi003 の名前でアクセスできるよう、/etc/hosts も変更しておきます(DNS などが有効であればそちらで対応いただくのがいいと思います):
$ sudo vi /etc/hosts

127.0.1.1       raspberrypiraspi001  raspberrypi をホスト名に変更

192.168.10.101  raspi001
192.168.10.102  raspi002
192.168.10.103  raspi003   raspi00X の名前でアクセスできるよう IP アドレスを指定して追加し保存

【SSH 鍵の共有】
この3台のラズパイ間ではパスワードなしで SSH 接続ができるように SSH 鍵を共有しておきます:
$ ssh-keygen -t rsa
$ ssh-copy-id raspi001
$ ssh-copy-id raspi002
$ ssh-copy-id raspi003

【Docker のインストール】
こちらで紹介した手順でラズパイに Docker をインストールします:
$ curl -sSL https://get.docker.com | sh

$ sudo usermod -aG docker pi

(このコマンドの後、一度ログアウトして再ログインする)

以上、ここまでの手順は3台のラズパイ全てで共通に行っておく必要があります。ちと面倒ですが、全てのラズパイに Docker をインストールするところまで実行しておきます。


【管理ノードの作成】
ここからは3台のラズパイの役割ごとに作業が変わる部分になります。まずは管理ノードを作成します。raspi001 において、自分のアドレスを指定して以下のコマンドを実行します:
$ docker swarm init --advertise-addr 192.168.10.101

Swarm initialized: current node (xenxp2w34x5dhvtdmq0ndwolk) is now a manager.

To add a worker to this swarm, run the following command:

    docker swarm join --token SWMTKN-1-0dg4im1kvb41odjj9zmhwug0bcvg6n8tt0d8548jxho5cp8cvo-df89pmegbdf4a3vy37apftv8r 192.168.10.101:2377

To add a manager to this swarm, run 'docker swarm join-token manager' and follow the instructions.


↑コマンドが成功すると青字のような出力になります。この中の太字部分(docker swarm join で始まる行)は後でワーカーノードで実行することになるコマンドなのでコピペできるようにしておきましょう。


【ワーカーノードの接続】
次にワーカーノード側(raspi002, raspi003)から管理ノードに接続します。上記の管理ノード作成時に実行したコマンドの実行結果をそのまま入力して実行します:
$ docker swarm join --token SWMTKN-1-0dg4im1kvb41odjj9zmhwug0bcvg6n8tt0d8548jxho5cp8cvo-df89pmegbdf4a3vy37apftv8r 192.168.1.153:2377

コマンドの実行が成功すると "This node joined a swarm as a worker." といったメッセージが表示されます。これを raspi002 と raspi003 の両方で(4台以上で構成する場合は全てのワーカーノードで)実行します。


【ノードの状態を確認】
ここまでの作業でこの環境が作れています:

2018012201


ノードの状態を確認してみます。raspi001 から以下のコマンドを実行します:
2019012202

$ docker node ls
ID                            HOSTNAME            STATUS              AVAILABILITY        MANAGER STATUS      ENGINE VERSION
xenxp2w34x5dhvtdmq0ndwolk *   raspi001            Ready               Active              Leader              18.09.0
hztpov7qya7y99m4oifx73ugt     raspi002            Ready               Active                                  18.09.0
wksx0mlyu9wsilk9c4jigvcib     raspi003            Ready               Active                                  18.09.0

実行結果↑の青字部分をみると raspi001, raspi002, raspi003 がリストされ、全て Active になっています。また raspi001 の MANAGER STATUS が Leader とマークされており、ここが管理ノードになっていることが確認できました。


あとはこの3つのラズパイと電源ケーブル等をつなげて鳩サブレー缶に押し込みます:
IMG_3802


鳩サブレ版の(?) docker swarm 環境が完成しました!
IMG_3800



(参考)
https://blog.ruanbekker.com/blog/2018/10/23/setting-up-a-docker-swarm-cluster-on-3-raspberrypi-nodes/