2週間ほど BlueMix を使ってみました。今後も BlueMix 関連のブログエントリを書いていくつもりですが、一度この段階で感じたことなどまとめて書いてみます。なお過去のエントリはこちらです:
- 「BlueMix を使う」
- 「BlueMix のダッシュボードとデータベースを使う」
- 「BlueMix 上で PHP アプリを動かす」


まず「全体的によく出来てる」なあ、と感じました。BlueMix はウェブアプリケーションを「アプリケーション」、データベースなどの周辺機能を「サービス」として分けて提供しており、「アプリケーション」では Java や Node.js、Ruby、そして(標準機能ではないですが)PHP などを動かすことができます。また「サービス」は用意された選択肢から IBM 製品のものも、そうでないものも含めて選ぶだけで追加でき、アプリケーション側でそのサービスに接続するような記述をすることで連携して使える、というものになっています。

開発者視点でのウェブアプリケーション開発というのは、おおまかにはこの「アプリケーション」部分を作ることになるわけで、そこでは各種言語が使えるような柔軟性が提供されています。一方でデータストア等の「サービス」は選んで使うだけ、なので、ほとんど負担がありません。この分離方法は開発者視点でも非常に有用で理にかなっているな、と感じました。

自分の場合は Java アプリと PHP アプリを中心に、自分の手元にあるオンプレミスや IaaS 環境用のアプリがどの程度動くのか、動かすためにどの程度の変更が必要か、を調べながら使ってみましたが、「ウェブアプリに関してはほぼそのまま使える」という印象を持ちました。IaaS 向けのアプリが PaaS の環境で、それも war ファイルが war ファイルのまま(データベースの接続情報さえ変えれば)デプロイして動く、というのは感動すら覚えました。PaaS というと制約の多さや、IaaS/オンプレミス環境から移植性の難しさなどをイメージとして持ってしまいますが、BlueMix ではその辺りはかなり好印象でした。

もちろん、世の中のアプリすべてがウェブアプリケーションだけで完結しているわけではない(スケジュールエージェントやバッチ処理が必要なものもある)ことは理解しています。ただ少なくともウェブ部分に関しては BlueMix で動かすことはさほど高いハードルではないように感じています。


もうひとつ感じたことは「情報が意外と多い」ことです。これは BlueMix の情報が多いというよりは、そのベースとなっている CloudFoundry の情報として見つかることが多いという意味です。この辺りはオープンソースコミュニティの強みと言えますね。ただ現段階ではやはり見つかる情報は英語が多い、という現実があることも付け加えておきます。


一方で、2週間使ってみた上で???な点もあります。まずサービスの中身がよく分からない、という点を挙げたいです。例えば MySQL サーバーを使いたければサービスから MySQL を選ぶだけでいい、確かにその通りです。でもこうして作成された MySQL サーバーのスペックやバックアップ体制、デフォルトで用意されるデータベースの属性(デフォルト言語は UTF-8 になっているのだろうか??など)、、、簡単なのは悪いことではないのですが、簡略化されすぎていて、良くも悪くもブラックボックスに隠れちゃってる(それでいて情報がない)点が多いと思いました。この辺りは CloudFoundry というよりは BlueMix の運用体制に関わる部分なので、IBM からの情報として開示してほしい所ではあります。

あと、現状はオープンベータとして開発者中心に無料で自由に使える素晴らしい環境を提供いただいているのですが、このベータプログラムが終了した後の、実際に商用サービスとして始まる際の情報が少なすぎると感じます。要は「このオープンベータプログラムはいつまで使えるの」「商用版を使うのにいくらかかるの?」ということです。

ちなみに本家 CloudFoundry では「使ったサーバーのメモリ量」をベースに課金されます。例えば 512MB のメモリを搭載したサーバー2台と 1GB のメモリを搭載したサーバー1台を使った場合は 2GB 分の課金がされる、という具合。CPU や I/O、ネットワーク、そして中で使った OS、ソフトウェアへの課金はありません。ある意味でシンプルな課金体系になっています。

※なお、CloudFoundry の現在の具体的な料金は $0.03 /GB/Hour (1GB を1時間使うと3セント)です:
 http://dreamand.me/cloud/cloudfoundry-v2-review/

 仮にメモリ 1GB のサーバー1台を30日間使う場合であれば $0.03 * 24 * 30 = $21.6 という計算になります。


これが BlueMix ではどうなるのでしょう? CloudFoundry と同じような体系になることも想像できますが、そうでない体系になる可能性もあります。またサービスで提供されている機能の中には IBM の商用ソフトウェアも含まれており、これらが無料で提供されるとは考えにくいのですが、ではどういった料金(体系)になるのか? BlueMix には使いやすいダッシュボードや豊富なサービスによる差別化もあると思うのですが、とにかく現状は価格に関する情報が少なすぎる(というか皆無)ので、その辺りの情報が欲しいところではあります。


最後に、今僕自身が「日本で CloudFoundry に詳しい会社ってどこだろう?」と考えた時、真っ先に思いつくのは実際に社内で活用していて、ウェブに資料も多く公開している楽天です。次が実際にサービスを展開しているNTTコミュニケーションズ。残念ながら、現時点では日本アイ・ビー・エムという印象は薄いです。

今後、BlueMix を展開していく中で、日本アイ・ビー・エムがこの国内2強に割って入るような会社として認識されるような存在になってほしい、そのためにもまだ充分とはいえない日本人ユーザー向け情報や資料を BlueMix を推進していく中でどんどん充実させていってほしい、と感じています。