ABC朝日放送様主催のハードウェアハッカソン「ABCハッカソン」が6月20日深夜に放送されました。関東地方ではニコ生と Youtube でサイマル放送され、ネットで試聴することができました:

新世紀発明バトル ABCハッカソン~ひらめきで世界を変えろ!~



ハッカソンをテーマとしたドキュメンタリー番組です。そのハッカソンも一般的な「ソフトウェアハッカソン」ではなく「ハードウェア(+ソフトウェア)ハッカソン」です。しかもテーマは「1万人規模のイベントを盛り上げるガジェットを作る」というもの。なかなかにハードル高そうなハッカソンですが、ハードウェアのハッカソン自体が珍しいこともあって、どんなものが生まれるのか興味津津でした。

私も現地で IBM Bluemix のサポート要員として参加していたこのイベントの結果を、初回放送が終わったこともあり(多少のネタバレが許されるという判断で)、自分なりの視点で情報を少し補足しながら説明したいと思います。なお、以下の内容には一部私の推測も含まれていることと、会社としての見解ではないことをご了承ください。


最優秀賞を獲得した「レコチョク’s」チームが取り組んだのは、音楽イベントでアーティストと目が合えば、それを教えてくれるデバイス "目、あいましたよね?" の開発でした。自分の好きなアーティストやアイドルのコンサートに行って、「今一瞬こっちを向いてくれたような・・・??」と(都合よく)解釈することもできますが、その事実を客観的に知らせてくれるサービスです。

具体的には株式会社ジェイアイエヌ様が開発したスマートメガネ JINS MEME を使ったものです。アーティストがこのメガネを装着してステージ上を動きまわる間、その視線の方向をほぼリアルタイムに計算してサーバーに送ります。一方、観客は専用のデバイスを持っていると想定し、(スマートフォンを通じて)送られてくるデータによって、アーティストの視線の方向に自分がいるかどうかを知ることができる(いたと判断したら、そのデバイスが反応する)、というものでした。 今回のハッカソンでは開発期間の問題もあり、スマートフォンがその通知を受けることができる、というものの実現を目指されていたようです。

この仕組み、JINS MEME からの情報量や更新頻度にもよるとは思いますが、観客が数人(デバイスが数台)であれば、MEME からの情報を http でウェブサーバーに送り、デバイスが(1秒おきなどで)定期的に Web サーバーを見に行く、という普通の(?)アルゴリズムで実現できるかもしれません。

ただ実用化を考えると問題もあります。まず http のような重いプロトコルで実装してしまうと、デバイスの電池消費の問題に直面します。そのデバイスはコンサートイベントの間中動き続けてもらわないといけないため、あまり電気を使うような実装方法は避けたい、という背景があります。また電池の問題はともかく、1万人規模のファン(1万台規模のセンサー)が定期的に Web サーバーに対して1秒おきレベルの頻度でアクセスを繰り返す、というのは、重い http プロトコルではサーバーの負担が大きく、すぐにパフォーマンスの限界が来てしまう、という現実的な問題もあります。「目があったかどうか」というリアルタイム性が重視されるこの処理はネットワークにも演算処理にもパフォーマンスが求められる厳しい要求仕様が隠れていることになります。アイデアの実用化を考えると、これらの問題点をどうやって解決するか?という問題を解決する目処が見込める必要があるのでした。


実は IBM Bluemix にはその答が用意されています。Bluemix が提供している IoT アプリ開発環境である Node-RED フローエディタや、そのインフラとなる Internet of Things Foundation サービスは軽量な MQTT プロトコルを使ってセンサーデータを集めます(集めるための手段やサーバーも提供しています)。プロトコルを軽量にすることでセンサー側の電池消費量を抑え、ネットワーク負担も減らし、その結果処理自体を軽く実装することが可能になります:
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また Node-RED フローエディタはセンサーデータのワークフローを視覚化された環境で作っていくと実際に動くものが作れる、という特徴を持っています:
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これらの Bluemix に用意された機能やサービスを使うことで、サービスやデバイスの開発者の余分な負担や心配を減らすことができ、生産性の高い開発が実現できるようになります。同時に多くの実績を持った実現性の高いインフラ環境が提供されていることで、開発者のメリットだけでなく、運用者やベンチャーキャピタルに対するメッセージにもなります。「パフォーマンスが厳しくなってきたから途中からインフラを変える」のは、言うほど簡単ではないし、この辺りをきちんと事前にアセスしておくことも大変だと思っています。そういった部分をプロにアウトソースできる IBM Bluemix はデバイスアプリケーション開発に適していると思っています。


今回はレコチョク’sチームの皆さんに Bluemix を採用いただくことができ、我々もその実現に向けて限られた時間の中でしたがご支援ができました。レコチョク’sチームへは企業賞である IBM 賞も贈呈させていただきましたが、結果として斬新なアイデアとその実現性の高さが評価された上で最優秀賞に選ばれたのだと思っています。改めてレコチョク’sの皆さん、おめでとうございました。

なお、このハッカソンでは最優秀賞のレコチョク’s以外にも、優秀賞を取った "五感王" の「ごったがえし」チーム、サイボウズ賞 "FLUERIR" の「チーム共犯者」にも IBM Bluemix を採用していただきました。 我々もハッカソン前には「ハードウェアのハッカソンで、果たして何チームが Bluemix を採用してくれるのだろう?もしゼロだったら・・」と不安を抱えての大阪入りでした。結果的として3つのチームに採用いただき、最終的にはいずれの3チームも何らかの評価を得る結果になりました。IBM としても非常に嬉しい結果になりました。


このイベントにはアイデアソンの段階から参加させていただき、普段思いつかないような多くのアイデアを目の当たりにする機会があり、とても刺激的でした。また IBM 同様にスポンサーとして参加した企業の皆様との交流機会もあり、得るものがとても多い3日間であったと思っています。