オフィスの中で無線 LAN を使っていると、たまにこんなことに遭遇します:
無線 LAN の調子が悪い!
繋がることは繋がるけど、反応が悪いし、すぐに切れちゃう!
全く繋がらないわけではないから自分の設定ミスではない。これは無線 LAN ステーション自体が不安定なのが原因だ! 管理者でてこーい!!

で、念のため隣の同僚に「お前もそうだよな?」と確認すると・・・ あれ、なんで大丈夫なの?
無線 LAN ステーションがおかしいわけではない? 何で自分だけ・・・??
wifi


こういった現象、もちろん原因が1つに絞られるわけではないのですが、考えられる可能性の1つとして「無線 LAN の(規格の)種類」があります。同じ無線 LAN ステーションに対しても異なるモードで接続した機器は異なる挙動になる可能性がある、ということです。

まず無線 LAN の種類を説明します。現在は 802.11a / 802.11b / 802.11g / 802.11n という4つの規格が存在しています。無線 LAN ステーションと無線 LAN 子機(PC とかスマホとか)やドライバが対応している無線 LAN 規格によってどのモードで接続することになるかが決まります。

これら4つの規格の違いは何でしょうか?使っている電波周波数や最大速度の違いもありますが、使い勝手を左右する違いとして「干渉の差」と「障害物の影響度合い」があります。

4つの規格を電波周波数帯で分けると、802.11a が 5GHz、802.11b と 802.11g が 2.4GHz です(802.11n は規格としては両方に対応しています)。周波数が高いほど、電子レンジや Bluetooth といった他の電子機器が発する電波ノイズの影響を受けにくくなります。例えば Bluetooth のマウスを接続した機器が近くにあるとか、そもそも自分自身が Bluetooth マウスを使っている、といった環境だとすると、無線 LAN を 802.11a で使っているとそれらの影響はあまり受けないけど、802.11b や 802.11g だと電波干渉を受けやすい(つまり無線も繋がりにくくなるし、マウスの方にも影響がでやすい)と言えます。

一方、周波数が高いと壁などの物理的な障害物があった時に電波が弱くなってしまい、広い範囲では利用しにくくなります。その意味では 802.11a はステーションから自分までの間にある障害物の影響を受けやすいので限られた範囲での利用になってしまう一方、802.11b や 802.11g は比較的広い範囲で使える、と言えます。

なお 802.11n は、規格としては 802.11a/b/g 全てを網羅しているのですが、実際には機器によって一部機能のみ使えたり使えなかったりもします。

仮に全ての規格に対応した無線 LAN の親機/子機を持っているとして、さてどのモードで接続させるのがよいでしょうか? これは何を優先するのか、という順位によっても答が変わってきます。でも壁の少ない、狭いオフィス内で使うことを前提とするのであれば、電波干渉の受けにくい 802.11a がいいのかな、と思っています。


話を戻します。

上記で書いたような現象が起こる原因の1つとして考えられるのは以下です:
・この人は 802.11b/g で無線 LAN に接続した結果、電波干渉の影響を受けて不安定になっている
・周りの同僚は 802.11a で無線 LAN に接続した結果、電波干渉をほとんど受けずに快適に使えている

一例として、日本で発売された iPhone の各バージョンがどの無線 LAN 規格に対応しているか、を特徴と併せて表にしてみました:
規格利用周波数帯電波干渉障害物の影響最大速度iPhoneの対応バージョン
802.11a5GHz受けにくい受けやすい54Mbps5 / 5c / 5s
802.11b2.4GHz受けやすい受けにくい11Mbps3G / 3GS/ 4 / 4s / 5 / 5c / 5s
802.11g2.4GHz受けやすい受けにくい54Mbps3G / 3GS/ 4 / 4s / 5 / 5c / 5s
802.11n(規格上は 802.11a/b/g を網羅)300Mbps4 / 4s / 5 / 5c / 5s

例えばですが、上記の人は iPhone 4s を使っていて、同僚が iPhone 5 以降を使っていた場合、自分は 802.11g に接続して干渉を受け、同僚は 802.11a に接続して快適、ということが起こり得るわけです。

余談ですが 802.11n についても補足しておくと、iPhone 4/4s は規格としては 802.11n に対応しています。でも干渉を受けにくい 5GHz 帯の電波を使って接続できるかというとできません。iPhone 4/4s の無線 LAN は利用周波数帯に関しては 2.4GHz での接続しかできない、ということです。この辺りがちょっとややこしいというかわかりにくい所です。

これはもちろん iPhone だけの問題ではなく、アンドロイドスマホやノート PC でも言えることです。使っている無線 LAN がどの規格に対応しているのか、無線 LAN 親機はどのモードでの接続に対応しているのか、それらによって隣の人と比べた際の無線 LAN の挙動も変わってくる、ということが起こり得るわけです。


iPhone に限った話をすると、4s 以前のモデルは無線 LAN では干渉を受けやすい接続しかサポートされてません。ということは、例えば Bluetooth キーボードと無線 LAN を同時に使おうとすると、それだけで干渉しまくる環境ができあがってしまうわけで、まあちょっと嫌だなあ、、、と。 その意味では今 4s 以前を使っていて無線 LAN に不満がある人はこの点だけでも 5 以降に変えるメリットはあるかもしれないですねー