(注 この記事の内容は少し古くなってしまっています。2017年1月時点の最新内容はこちらからどうぞ)
メインフレーム(IBM z Systems)版 Linux 環境である LinuxONE が無償利用可能なクラウドコミュニティサービスとして公開されました:
https://developer.ibm.com/linuxone/
アプリケーション開発者や学生さんであれば、ユーザー登録するだけで LinuxONE 版の RHEL(RedHat Enterprise Linux) を最大90日間利用することができます(root 権限もあります)。メインフレーム版の Linux の使い勝手やパフォーマンス、そしてアプリケーション互換性など気になります。試しに自分も使ってみました。
日本語での利用ガイドはこちらにあります(PDF)。この手順で実際にアクセスできる環境の構築まではできますが、その後使ってみるとちょっと気になったので補足したり、実際に使い始めてみての印象も含めて自分なりの感想を書き綴ってみたつもりです:
http://www-03.ibm.com/systems/jp/resources/linuxone_cc-quick-start-guide.pdf
ちなみにこの環境はニューヨーク州ポケプシーにあるマリスト大学内に LinuxONE を設置して、ホスティング環境を提供いただいて実現しています。つまり接続先はニューヨークになります:
Marist College Partners with IBM and Linux Foundation to Support Linux on the Mainframe
では実際にユーザー登録して使ってみましょう。まずは LinuxONE Community Cloud サイトにアクセスして、トップページの "Register NOW" と書かれたボタンをクリックします:

名前やメールアドレスなどの利用者情報を入力します。途中に携帯電話番号を指定する箇所があり、確認のためその携帯電話に送られる認証コードを入力して進める、という流れになっています:

ここでの手続きが完了するとこのような画面になります。この後登録したメールアドレスに何通かのメールが順次送られてきます:

そのうちの一通がこちらです。LinuxONE Community Cloud のダッシュボード画面への URL が記載されているのでメモしておきましょう:

別メールでこのような内容が送られてきます。上記のダッシュボードにログインするための情報が記載されています:

ここまでの情報が揃っていれば実際に LinuxONE Community Cloud を利用することができるようになります。上記のメールで送られてきた URL にブラウザでアクセスすると、このようなログイン画面が表示されます。別メールで送られてきた User ID とパスワードを指定してログインします:

ログイン直後はこのような画面になります。OS イメージとか色々気になりますが、実際に作ったインスタンスにアクセスするには SSH 鍵ペアが必要になるので、最初に作って(登録して)おきます。"Access" と書かれたタブをクリックします:

"Access" タブの "Key Pairs" 画面に移ると現在登録されている鍵の一覧が表示されます(この時点では何も登録されていないはずです)。新規に作成してもいいですし、手持ちの鍵ペアをインポートする形で登録しても、どちらでも構いません。私は自分が持っていた SSH 鍵をインポートして使うことにしたので後者の手順を紹介します(自分で鍵を作成する手順はこちらを参照ください)。画面内一番右の "Import" アイコンをクリックします:

環境(LinuxONE Community Cloud)と鍵の名前(任意)、そしてインポートしたい公開鍵の内容をペーストするか、あるいは "Browse" で公開鍵ファイルを指定して、"Import" します:

新規作成やインポートが成功するとこんな感じの画面になります。正しく認証鍵が登録できました:

ではこの鍵を使って Linux インスタンスを作成してみます。"Images" タブを開いて利用可能なイメージの一覧を確認します。現時点では素の RHEL6.7 環境と、RHEL6.7 に MongoDB が付属している(と思われる)環境の2つのイメージが登録されて使えるようになっていました。どちらでもいいのですが、とりあえずは最小構成を試してみたいので前者を選択します:

RHEL6.7 イメージの内容が表示されます。これをインスタンスとしてデプロイしたいので "Deploy" ボタンをクリックします:

デプロイ時の情報入力画面に切り替わります。ここに必要な情報を入力/指定していきます:

Name には任意の名称を入力します。注意点として Project はデフォルトの "Public" ではなく、自分に割り当てられたプロジェクト ID (要するに "Public" じゃない方)を指定し直してください。なおインスタンスの有効期限も指定できますが、デフォルトで最長の90日間になっているはずです:

続きです。System の Flavor (規模)は "m1.linuxone" が唯一の選択肢になっているはずなので、これを選びます。この Flavor で CPU x 2、メモリ 2GB のスペックになります。そして Access and Security では上記で作成した鍵ペアの名前を必ず指定してください(これをしないと作成したインスタンスにアクセスする術がなくなります)。最後に "Deploy" ボタンをクリックすると作成が開始されます:

画面が切り替わり、インスタンスが作成中である旨のメッセージが表示されます:

画面をリロードすると、インスタンスが作成中であることがわかります:

しばらく待つと作成したインスタンスの Status が OK となります。これでインスタンスが作成され、起動も完了したことになります。名前部分をクリックしてインスタンスの詳細を確認しましょう:

インスタンスの詳細画面です。この中にパブリック IP アドレスが記載されているので、この値をメモしておきましょう:

では作成した LinuxONE のサーバーインスタンスにアクセスして実際に使ってみましょう。Teraterm などの SSH クライアントを使って、先程メモした IP アドレスに SSH アクセスします。その際のユーザー名には "linux1"、秘密鍵にはあらかじめ作成した(あるいは作成してダウンロードした)秘密鍵ファイル、そしてパスフレーズには秘密鍵作成時に指定したパスフレーズを入力してアクセスします:

プロンプトが表示されればログイン成功です!:

とりあえず cpuinfo とシステム名を確認してみました。間違いなく IBM/S390 システムで CPU は2個確認できます:

この linux1 ユーザーは sudo 権限を持っているので root 権限でコマンドを実行したり、rpm や yum コマンドで新たにアプリケーションをインストールしたりすることもできます。軽く使ってみた感じでは「Intel 版の RHEL(CentOS) とほとんど変わらない、というか違いを感じない」という印象です。
1つだけ、環境を見ていて気付いたのはイーサネットの設定で DNS サーバーが指定されていないことでした(つまり名前解決ができません)。私は /etc/sysconfig/network-scripts/ifcfg-eth0 に以下の1行を追加(Google の公開 DNS サーバーを指定)して再起動することで解決しています:
RHEL 環境としては Intel 版とほぼ変わらないことを確認するため、試しにこの記事を参考にして、LinuxONE に X Window と VNC サーバーをインストールして、VNC クライアントからデスクトップ環境にアクセスしてみました(実際、リンク先の記事と同じ手順に加えて、デフォルトで有効になっていた iptables を外すだけで実現できました):

その他、ざっと yum でのインストールを試してみた感じではこんな結果でした:
標準の yum リポジトリでは見つからない、というだけの可能性もあるので、不可になっているものが実際には可能だったりすることもあると思います。個人的には新し目の JDK を見つけておけると色々使えそう、という印象です。LAMP デベロッパーに関してはほぼ困らないのかも。。
(2016/Jan/15 追記)
標準リポジトリから IBM Java の 1.7.1 がインストールできることを確認しました:
メインフレーム(IBM z Systems)版 Linux 環境である LinuxONE が無償利用可能なクラウドコミュニティサービスとして公開されました:
https://developer.ibm.com/linuxone/
アプリケーション開発者や学生さんであれば、ユーザー登録するだけで LinuxONE 版の RHEL(RedHat Enterprise Linux) を最大90日間利用することができます(root 権限もあります)。メインフレーム版の Linux の使い勝手やパフォーマンス、そしてアプリケーション互換性など気になります。試しに自分も使ってみました。
日本語での利用ガイドはこちらにあります(PDF)。この手順で実際にアクセスできる環境の構築まではできますが、その後使ってみるとちょっと気になったので補足したり、実際に使い始めてみての印象も含めて自分なりの感想を書き綴ってみたつもりです:
http://www-03.ibm.com/systems/jp/resources/linuxone_cc-quick-start-guide.pdf
ちなみにこの環境はニューヨーク州ポケプシーにあるマリスト大学内に LinuxONE を設置して、ホスティング環境を提供いただいて実現しています。つまり接続先はニューヨークになります:
Marist College Partners with IBM and Linux Foundation to Support Linux on the Mainframe
では実際にユーザー登録して使ってみましょう。まずは LinuxONE Community Cloud サイトにアクセスして、トップページの "Register NOW" と書かれたボタンをクリックします:

名前やメールアドレスなどの利用者情報を入力します。途中に携帯電話番号を指定する箇所があり、確認のためその携帯電話に送られる認証コードを入力して進める、という流れになっています:

ここでの手続きが完了するとこのような画面になります。この後登録したメールアドレスに何通かのメールが順次送られてきます:

そのうちの一通がこちらです。LinuxONE Community Cloud のダッシュボード画面への URL が記載されているのでメモしておきましょう:

別メールでこのような内容が送られてきます。上記のダッシュボードにログインするための情報が記載されています:

ここまでの情報が揃っていれば実際に LinuxONE Community Cloud を利用することができるようになります。上記のメールで送られてきた URL にブラウザでアクセスすると、このようなログイン画面が表示されます。別メールで送られてきた User ID とパスワードを指定してログインします:

ログイン直後はこのような画面になります。OS イメージとか色々気になりますが、実際に作ったインスタンスにアクセスするには SSH 鍵ペアが必要になるので、最初に作って(登録して)おきます。"Access" と書かれたタブをクリックします:

"Access" タブの "Key Pairs" 画面に移ると現在登録されている鍵の一覧が表示されます(この時点では何も登録されていないはずです)。新規に作成してもいいですし、手持ちの鍵ペアをインポートする形で登録しても、どちらでも構いません。私は自分が持っていた SSH 鍵をインポートして使うことにしたので後者の手順を紹介します(自分で鍵を作成する手順はこちらを参照ください)。画面内一番右の "Import" アイコンをクリックします:

環境(LinuxONE Community Cloud)と鍵の名前(任意)、そしてインポートしたい公開鍵の内容をペーストするか、あるいは "Browse" で公開鍵ファイルを指定して、"Import" します:

新規作成やインポートが成功するとこんな感じの画面になります。正しく認証鍵が登録できました:

ではこの鍵を使って Linux インスタンスを作成してみます。"Images" タブを開いて利用可能なイメージの一覧を確認します。現時点では素の RHEL6.7 環境と、RHEL6.7 に MongoDB が付属している(と思われる)環境の2つのイメージが登録されて使えるようになっていました。どちらでもいいのですが、とりあえずは最小構成を試してみたいので前者を選択します:

RHEL6.7 イメージの内容が表示されます。これをインスタンスとしてデプロイしたいので "Deploy" ボタンをクリックします:

デプロイ時の情報入力画面に切り替わります。ここに必要な情報を入力/指定していきます:

Name には任意の名称を入力します。注意点として Project はデフォルトの "Public" ではなく、自分に割り当てられたプロジェクト ID (要するに "Public" じゃない方)を指定し直してください。なおインスタンスの有効期限も指定できますが、デフォルトで最長の90日間になっているはずです:

続きです。System の Flavor (規模)は "m1.linuxone" が唯一の選択肢になっているはずなので、これを選びます。この Flavor で CPU x 2、メモリ 2GB のスペックになります。そして Access and Security では上記で作成した鍵ペアの名前を必ず指定してください(これをしないと作成したインスタンスにアクセスする術がなくなります)。最後に "Deploy" ボタンをクリックすると作成が開始されます:

画面が切り替わり、インスタンスが作成中である旨のメッセージが表示されます:

画面をリロードすると、インスタンスが作成中であることがわかります:

しばらく待つと作成したインスタンスの Status が OK となります。これでインスタンスが作成され、起動も完了したことになります。名前部分をクリックしてインスタンスの詳細を確認しましょう:

インスタンスの詳細画面です。この中にパブリック IP アドレスが記載されているので、この値をメモしておきましょう:

では作成した LinuxONE のサーバーインスタンスにアクセスして実際に使ってみましょう。Teraterm などの SSH クライアントを使って、先程メモした IP アドレスに SSH アクセスします。その際のユーザー名には "linux1"、秘密鍵にはあらかじめ作成した(あるいは作成してダウンロードした)秘密鍵ファイル、そしてパスフレーズには秘密鍵作成時に指定したパスフレーズを入力してアクセスします:

プロンプトが表示されればログイン成功です!:

とりあえず cpuinfo とシステム名を確認してみました。間違いなく IBM/S390 システムで CPU は2個確認できます:

この linux1 ユーザーは sudo 権限を持っているので root 権限でコマンドを実行したり、rpm や yum コマンドで新たにアプリケーションをインストールしたりすることもできます。軽く使ってみた感じでは「Intel 版の RHEL(CentOS) とほとんど変わらない、というか違いを感じない」という印象です。
1つだけ、環境を見ていて気付いたのはイーサネットの設定で DNS サーバーが指定されていないことでした(つまり名前解決ができません)。私は /etc/sysconfig/network-scripts/ifcfg-eth0 に以下の1行を追加(Google の公開 DNS サーバーを指定)して再起動することで解決しています:
: : DNS1=8.8.8.8
RHEL 環境としては Intel 版とほぼ変わらないことを確認するため、試しにこの記事を参考にして、LinuxONE に X Window と VNC サーバーをインストールして、VNC クライアントからデスクトップ環境にアクセスしてみました(実際、リンク先の記事と同じ手順に加えて、デフォルトで有効になっていた iptables を外すだけで実現できました):

その他、ざっと yum でのインストールを試してみた感じではこんな結果でした:
アプリケーション | インストール可否 | コメント |
---|---|---|
X Window | 可 | yum groupinstall "X Window" |
Tiger VNC | 可 | yum install tigervnc-server |
OpenJDK | 不可 | yum リポジトリに見つからない (ただし標準で 1.5.0 導入済み) |
IBM JDK | 可 | yum install java-1.7.1-ibm-devel |
PHP | 可 | yum install php php-mbstring php-mysql .. |
Tomcat(6) | 可 | yum install tomcat6 tomcat6-webapps tomcat6-admin-webapps |
Apache HTTPD | 可 | yum install httpd |
MySQL | 可 | yum install mysql-server |
FireFox | 可 | yum install firefox |
Eclipse | 不可 | yum リポジトリに見つからない |
OpenOffice/LibreOffice | 不可 | yum リポジトリに見つからない |
screen | 可 | yum install screen |
tmux | 可 | ソースからコンパイルしてビルド 参照 |
x3270 エミュレータ | 可 | yum install x3270 x3270-text x3270-x11 |
標準の yum リポジトリでは見つからない、というだけの可能性もあるので、不可になっているものが実際には可能だったりすることもあると思います。
(2016/Jan/15 追記)
標準リポジトリから IBM Java の 1.7.1 がインストールできることを確認しました:
# yum install java-1.7.1-ibm-devel
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