前回の続きです:
Bluemix のビルドパックを作る(1/3)


このシリーズは3回に分けて IBM Bluemix 用のビルドパックをゼロから作成する手順を説明するもので、今回はその2回目です:
(1) ビルドパックを作る上で知っておくべきこと
(2) ビルドパックを作るための準備作業      ←今回はここ
(3) ビルドパックを作成して、実際に動作確認


前回は、ビルドパックを作成する上で知っておくべき仕組みや制限事項についてをまとめました。おおまかには次のような仕組み/条件でビルドパックを作ります:
- ビルドパック自体は detect, compile, release の3つのスクリプトからなる。
- これら3つのスクリプトは一般ユーザー権限で実行される。su や sudo は使えない。
- 素の Ubuntu Linux に対して、これら3つのスクリプトが実行された後に必要な環境が整っているようにする。

今回と次回の2回に分けて、実際にビルドパックをゼロから作成します。正確には実際にビルドパックそのものを作る手順は次回紹介しますが、今回はそのための準備作業を紹介します。具体的には実際にビルドパックを作るスクリプトは一般ユーザー権限でしか実行できないため、ビルドなどの root 権限が必要な作業はあらかじめ(Ubuntu 環境下で)済ませておく必要があります。そのための作業の説明を今回のブログエントリの中で紹介します。

また、今回作成するビルドパックの内容は「比較的緩めな日本語対応 PHP アプリケーションサーバーを作る」こととします。具体的には以下の様なスペック PHP アプリケーションサーバーのビルドパックを作ります:
・ PHP 5.6.14
・ Apache HTTPD 2.4.16
・ PHP の MySQL モジュールと Postgresql モジュールを追加
・ PHP の設定は日本語 UTF-8 ベースで、エラー発生時のエラー内容を出力、ファイルアップロードは1ファイル10MB まで許可、・・・などなど php.ini を緩めに設定
・ Apache HTTPD も .htaccess での設定上書きを許可するなど、ゆるゆるにする

簡単にいえば「php.ini と httpd.conf を緩めに設定するような環境で PHP のビルドパックを作成する」ということです。


では本エントリでの作業に入ります。まずは 64bit の Ubuntu Linux 14.02 環境を用意します。デスクトップ環境は必須ではありません。SSH 等でログインしてターミナル上での操作ができれば大丈夫です:
2015100900



この Ubuntu の中に PHP と Apache HTTPD 環境を構築していきます。といっても、ただインストールすればいいというわけではありません。インストールだけなら "sudo apt-get install php5 apache2 libapache2-mod-php5" とかを実行すればいいのですが、これは sudo が使える前提での話です。上記のようにビルドパック作成時の権限は sudo の使えないユーザー権限なので、この apt-get による簡単なインストール方法は使えないのです。

ではどうするか? その答は (2) まず Ubuntu 内で必要なモジュールを、ソースからのコンパイルなど全て手作業で作り、 (3) 作ったモジュールを tar などでまとめておき、ビルドパック作成時は一般ユーザーが展開してコピーすればよい、という状態にしておく 必要があるのでした。要は root 権限が必要な部分((2))と、不要な部分((3))に作業を分断し、ビルドパック作成時は root がなくてもできる作業だけを行います。そしてそのような作業だけで済むように、root 権限が必要な作業は(ビルドパック作成作業の前)あらかじめ済ませてまとめておく、という作業を行うようにします。これが全体作業でいうところの (2) と (3) を分けた理由でもあります。

では、あらためて今回行う作業の内容をまとめておきます:
(2-1) Apache HTTPD 2.4.16 をソースからビルドして /app/apache/ 以下にインストール
(2-2) PHP 5.6.14 をソースからビルドして /app/php/ 以下にインストール
(2-3) 出来上がった Apache HTTPD 2.4.16 および PHP 5.6.14 のモジュールを /app/apache/ および /app/php/ 以下からそれぞれ取り出してアーカイブ

こうして出来上がったアーカイブファイルは、Ubuntu 環境の /app/apache/ & /app/php/ 以下であれば動くように作られているので、同じ状態を作り出すようにビルドパックを構成(次回)すればよい、ということになります。今回はそのための準備を行います。


では具体的な作業手順の説明です。まずは Ubuntu 14.02(64bit) のターミナル環境に SSH 等でログインします:
2015100901


まずは作業ディレクトリを作成します。今回は /tmp/build を作業ディレクトリとします:
$ mkdir -p /tmp/build
$ cd /tmp/build


(2-1) Apache HTTPD 2.4.16 のソースコード一式をダウンロードし、作業ディレクトリ内に展開します:
$ curl -L http://www.carfab.com/apachesoftware/httpd/httpd-2.4.16.tar.gz | tar xzf -


Apache HTTP のビルドに必要な apr-1.5.2 および apr-util-1.5.2 をそれぞれダウンロードし、作業ディレクトリ内の srclib/ ディレクトリ内に展開します:
$ cd httpd-2.4.16/srclib
$ curl http://www.us.apache.org/dist/apr/apr-1.5.2.tar.gz | tar xzf -
$ mv apr-1.5.2 apr
$ curl http://www.us.apache.org/dist/apr/apr-util-1.5.4.tar.gz | tar xzf -
$ mv apr-util-1.5.4 apr-util
$ cd ..


Apache HTTP のビルドに必要なライブラリ(libpcre3, libpcre3-dev)を apt-get で入手します:
$ sudo apt-get install libpcre3 libpcre3-dev


Apache HTTP ビルド後のインストールディレクトリを /app/apache/ とする前提でビルド(configure して make して make install )します:
$ ./configure --prefix=/app/apache --with-included-apr --enable-rewrite
$ sudo mkdir -p /app/apache
$ sudo chmod -R 777 /app/
$ make && make install


(2-2) PHP インストール先のディレクトリ(/app/php/)を用意します:
$ sudo mkdir -p /app/php


(2-1) の作業でビルドしたモジュールの一部を PHP のライブラリとしてコピーします:
$ sudo mkdir -p /app/php/ext
$ sudo chmod -R 777 /app/php
$ cp /app/apache/lib/libapr-1.so.0 /app/php/ext
$ cp /app/apache/lib/libaprutil-1.so.0 /app/php/ext
$ cd /app/php/ext
$ ln -s libapr-1.so.0 libapr-1.so
$ ln -s libaprutil-1.so.0 libaprutil-1.so


PHP のビルドに必要なライブラリ(libxml2, libxml2-dev, libssl-dev, ...)を apt-get で入手します。平行して PostgreSQL をサポートするために必要な環境を整えます:
$ cd /tmp/build
$ sudo echo “deb http://apt.postgresql.org/pub/repos/apt/ trusty-pgdg main”> /etc/apt/sources.list.d/pgdg.lis
$ wget --quiet -O - https://www.postgresql.org/media/keys/ACCC4CF8.asc |  sudo apt-key add -OK
$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get install libxml2 libxml2-dev libssl-dev libvpx-dev libjpeg-dev libpng12-dev libXpm-dev libbz2-dev libmcrypt-dev libcurl4-openssl-dev libfreetype6-dev postgresql-server-dev-9.4


PHP のソースコード一式をダウンロードし、作業ディレクトリ内に展開します:
$ curl -L http://php.net/get/php-5.6.14.tar.gz/from/us1.php.net/mirror | tar xzf -


PHP ビルド後のインストールディレクトリを /app/php/ とする前提でビルド(configure して make して make install )します:
$ cd php-5.6.14
$ ./configure --prefix=/app/php --with-apxs2=/app/apache/bin/apxs --with-mysqli --with-pdo-mysql --with-pgsql --with-pdo-pgsql --with-iconv --with-gd --with-curl=/usr/lib --with-config-file-path=/app/php --enable-soap=shared --enable-libxml --enable-simplexml --enable-session --with-xmlrpc --with-openssl --enable-mbstring --with-bz2 --with-zlib --with-gd --with-freetype-dir=/usr/lib --with-jpeg-dir=/usr/lib --with-png-dir=/usr/lib --with-xpm-dir=/usr/lib
$ make && make install


MySQL クライアントライブラリを apt-get で入手して、PHP / Apache のライブラリとしてコピーします:
$ sudo apt-get install libmysqlclient-dev
$ cd /app/php/ext
$ cp /usr/lib/x86_64-linux-gnu/libmysqlclient.so.18.0.0 ./
$ ln libmysqlclient.so.18.0.0 libmysqlclient.so.18
$ ln libmysqlclient.so.18.0.0 libmysqlclient.so
$ cp /tmp/build/php-5.6.14/.libs/libphp5.so /app/apache/modules/


(2-3) コンパイルが終了した Apache HTTP のモジュールをアーカイブします:
$ cd /app
$ echo '2.4.16' > apache/VERSION
$ tar -zcvf apache-2.4.16.tar.gz apache


コンパイルが終了した PHP のモジュールをアーカイブします:
$ echo '5.6.14' > php/VERSION
$ tar -zcvf php-5.6.14.tar.gz php




これで (2) の作業が完了して、ビルドパックを作るための作業準備が整いました。今回の作業で出来上がった apache-2.4.16.tar.gz および php-5.6.14.tar.gz はどちらも /app/ 以下にコピーすれば正しく動く前提で作られているので、これらのモジュールを使い、この条件でビルドパックを作ってあげればよい、ということになります。

次回はいよいよ実際にビルドパックを作って、動作確認までしてみます。ゴールは目前!


(注 2015/Oct/16 追記)
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