IBM Bluemix を通じて提供されているコグニティブサービス(認識型人工知能)API の1つに Tradeoff Analytics があります:
この API を理解するにはデモサイトを参照していただくのがいいと思います:
http://tradeoff-analytics-demo.mybluemix.net/
このデモサイトでは「一覧の中で、自分にあったスマホはどれか?」という命題を、その人が重要視するスペックポイントを明確にした上で候補を上げていく、というものです。
スマホはメモリは多い方がいいし、バッテリーは多い方がいいけど、そうすると重量が重くなります。でも重量は気にする人もいればいない人もいます。また価格は安い方がいいに決まっていますが、メモリやバッテリー、重量などの要素と比べて重要度が高いのか低いのか、は人によって異なってきます。 全てを満たすパーフェクトなスマホはそうそう出てこないでしょうから、結局はどの要素を重要視するかでトレードオフを考えることになると思いますが、どの要素を重要視した場合はどのような結果になるか、を判断してくれる、そんな API です。
例えば上記デモサイトを開くと、デフォルトでは以下の様な表が表示されます:
一番上の列がヘッダで、2行目からがスマホの候補リストになっています。表の3列目以降がスペックになっていて、3列目は価格(小さい方がいい)、4列目はRAMメモリ量(多い方がいい)、5列目はスクリーンサイズ(意見が別れるところですが、ここでは大きい方がいい)、6列目はカメラの画素数(多い方がいい)、7列目はメモリ量(多い方がいい)、8列目はバッテリー容量(多い方がいい)、そして9列目は重量(少ない方がいい)となっています。このうちデフォルト状態では価格、スクリーンサイズ、重量の色が緑になっていて、今はこの3点を重要視する人にとってのトレードオフを解析する指定になっています。
もしもこれら以外の点を重要視したい場合は表右下の "View/Edit JSON" と書かれた箇所をクリックして JSON の内容を変更します。例えば「スクリーンサイズは気にしないけど、バッテリー容量は重要!」という場合は以下のように値を変更します。 まずスクリーンサイズは今回意識しなくていいので、JSON 内の columns の中で "key" 値が "screen_size" になっている項目の "is_objective" 値を true から false に変更します。この "is_objective" の値が true のものはトレードオフの考慮に含めて、false のものは含めない、という指定です。なお "goal" 値が "MAX" のものは「(メモリ量など)大きい方がいい」という値、"MIN" のものは「(価格など)小さい方がいい」という値だという指定です:
続いてバッテリー容量はトレードオフに新たに含めたいので、同様にして "key" 値が "battery" になっている項目の "is_objective" 値を false から true に変更します:
この状態で編集エリア右下の "Back to table" をクリックすると、価格とバッテリー容量と重量の3点が重要視指定された状態の表が表示されるはずです。なお、これら以外でも JSON を変更することで候補スマホの名称や各数値を変更することもできます。全て JSON フォーマットで指定されていることを確認しておいてください:
重要視する項目が決まったら、画面右下の "Analyze Sample Data" と書かれたボタンをクリックして、トレードオフを計算します:
すると画面下に以下のようなグラフが表示されて、指定した3項目でのトレードオフを考えた結果が表示されます。各スマホアイテムがそれぞれの要素を意識した時にどの位置にあるのか、ということが視覚化されています:
例えば、ここでバッテリー項目の下限のスライダーを 1000 から 1500 近くまで移動させると、「バッテリー容量が指定値(1500)以下のものは考慮しない」という指定をしたことになり、画面上部付近にあったいくつかのバッテリー容量の少ないスマホが画面から消えます。これで更に絞込みやすくなります:
・・・と、なんとなく「トレードオフ解析」の意味がお分かりいただけたでしょうか? IBM Bluemix で用意されているのは、このような解析を行うための(与えられた条件から、上記の結果グラフを書くための)API が用意されている、という点が特徴です。つまり上記デモサイトのようなことを皆さんの作るアプリケーションの中でも実現できるようになる、ということです。
実際にこの API を利用するには、IBM Bluemix で上記の Tradeoff Analytics サービスをランタイムアプリケーションにバインドして資格情報を確認し、利用のための username と password を取得しておく必要があります
ここまで準備できれば API そのものは単純です。取得した username と password を使って Basic 認証を行い、https://gateway.watsonplatform.net/tradeoff-analytics-beta/api/v1/dilemmas に対して、解析させたい JSON(上記の Edit JSON をクリックして編集したもの)をポストするだけです。
成功すると、以下の様な JSON が結果として返ってきます:
結果の JSON の細かい内容は以下のリファレンスを参照していただきたいのですが、大きく3つの箇所を参照することになります。 1つ目は "problem" で、この中にポストした JSON がそのまま記述されているはずです。つまり「この問題に対する実行結果である」ことを示しています。
2つ目は "resolutions" の中の "map" で、ここに散布図を書いた時の各点の座標(x,y)が示されており、またその座標位置に相当するアイテムがあった場合は "solutions_refs" という配列値で示されます。例えば上の例ですと ( 6.0, 0.0 ) の位置に "key" 値が "5" に相当するアイテムがある、ということになります。
最後の3つ目は "resolutions" の中の "anchors" で、これが指定した各トレードオフ要素(この例では価格とバッテリー容量と重量)が散布図上のどの位置にあるかを示しています。
後はこの結果を受け取った側でどのように見せるか、という問題になります。チャート描画の API を使ってもいいし、Canvas を使って自分で記述してもいいと思います。ここから先は開発者やデザイナーの腕の見せ所と言えます。そういう意味ではここのデモサイトはなかなか良くできてますよね。
というわけで、これまでにこのブログで紹介してきたコグニティブサービスとは少し(特に実行方法の面で)毛色が違うサービスと言えます。API 実行時に指定フォーマットの JSON を作る必要があるのが少し面倒ですが、トレードオフを意識する要素と、それらの値は大きい方が嬉しいのか小さい方が嬉しいのかの情報、そしてアイテムの一覧を JSON にしてポストすれば結果が返ってくる、というものです。REST API そのものはシンプルなのでエクセルのような表計算からも実行できると思っています(エクセルだと逆に結果の視覚化が難しいかも・・)。
なお、ここで紹介した Watson Tradeoff Analytics API について、詳しくは API リファレンスを参照してください:
http://www.ibm.com/smarterplanet/us/en/ibmwatson/developercloud/apis/#!/tradeoff-analytics
この API を理解するにはデモサイトを参照していただくのがいいと思います:
http://tradeoff-analytics-demo.mybluemix.net/
このデモサイトでは「一覧の中で、自分にあったスマホはどれか?」という命題を、その人が重要視するスペックポイントを明確にした上で候補を上げていく、というものです。
スマホはメモリは多い方がいいし、バッテリーは多い方がいいけど、そうすると重量が重くなります。でも重量は気にする人もいればいない人もいます。また価格は安い方がいいに決まっていますが、メモリやバッテリー、重量などの要素と比べて重要度が高いのか低いのか、は人によって異なってきます。 全てを満たすパーフェクトなスマホはそうそう出てこないでしょうから、結局はどの要素を重要視するかでトレードオフを考えることになると思いますが、どの要素を重要視した場合はどのような結果になるか、を判断してくれる、そんな API です。
例えば上記デモサイトを開くと、デフォルトでは以下の様な表が表示されます:
一番上の列がヘッダで、2行目からがスマホの候補リストになっています。表の3列目以降がスペックになっていて、3列目は価格(小さい方がいい)、4列目はRAMメモリ量(多い方がいい)、5列目はスクリーンサイズ(意見が別れるところですが、ここでは大きい方がいい)、6列目はカメラの画素数(多い方がいい)、7列目はメモリ量(多い方がいい)、8列目はバッテリー容量(多い方がいい)、そして9列目は重量(少ない方がいい)となっています。このうちデフォルト状態では価格、スクリーンサイズ、重量の色が緑になっていて、今はこの3点を重要視する人にとってのトレードオフを解析する指定になっています。
もしもこれら以外の点を重要視したい場合は表右下の "View/Edit JSON" と書かれた箇所をクリックして JSON の内容を変更します。例えば「スクリーンサイズは気にしないけど、バッテリー容量は重要!」という場合は以下のように値を変更します。 まずスクリーンサイズは今回意識しなくていいので、JSON 内の columns の中で "key" 値が "screen_size" になっている項目の "is_objective" 値を true から false に変更します。この "is_objective" の値が true のものはトレードオフの考慮に含めて、false のものは含めない、という指定です。なお "goal" 値が "MAX" のものは「(メモリ量など)大きい方がいい」という値、"MIN" のものは「(価格など)小さい方がいい」という値だという指定です:
{
"key": "screen_size",
"full_name": "Screen size (inch)",
"type": "NUMERIC",
"is_objective": false,
"goal": "MAX"
},
続いてバッテリー容量はトレードオフに新たに含めたいので、同様にして "key" 値が "battery" になっている項目の "is_objective" 値を false から true に変更します:
{
"key": "battery",
"full_name": "Battery (mAh)",
"type": "NUMERIC",
"is_objective": true,
"goal": "MAX"
},
この状態で編集エリア右下の "Back to table" をクリックすると、価格とバッテリー容量と重量の3点が重要視指定された状態の表が表示されるはずです。なお、これら以外でも JSON を変更することで候補スマホの名称や各数値を変更することもできます。全て JSON フォーマットで指定されていることを確認しておいてください:
重要視する項目が決まったら、画面右下の "Analyze Sample Data" と書かれたボタンをクリックして、トレードオフを計算します:
すると画面下に以下のようなグラフが表示されて、指定した3項目でのトレードオフを考えた結果が表示されます。各スマホアイテムがそれぞれの要素を意識した時にどの位置にあるのか、ということが視覚化されています:
例えば、ここでバッテリー項目の下限のスライダーを 1000 から 1500 近くまで移動させると、「バッテリー容量が指定値(1500)以下のものは考慮しない」という指定をしたことになり、画面上部付近にあったいくつかのバッテリー容量の少ないスマホが画面から消えます。これで更に絞込みやすくなります:
・・・と、なんとなく「トレードオフ解析」の意味がお分かりいただけたでしょうか? IBM Bluemix で用意されているのは、このような解析を行うための(与えられた条件から、上記の結果グラフを書くための)API が用意されている、という点が特徴です。つまり上記デモサイトのようなことを皆さんの作るアプリケーションの中でも実現できるようになる、ということです。
実際にこの API を利用するには、IBM Bluemix で上記の Tradeoff Analytics サービスをランタイムアプリケーションにバインドして資格情報を確認し、利用のための username と password を取得しておく必要があります
ここまで準備できれば API そのものは単純です。取得した username と password を使って Basic 認証を行い、https://gateway.watsonplatform.net/tradeoff-analytics-beta/api/v1/dilemmas に対して、解析させたい JSON(上記の Edit JSON をクリックして編集したもの)をポストするだけです。
成功すると、以下の様な JSON が結果として返ってきます:
{ "problem": { "columns" : [ { "key" : "price", "format" : "", : (ポストした JSON の内容) : }, "resolution" : { "solutions" : [ { : : } ], "map" : [ { "nodes" : [ { "coordinates" : { "x":0.0, "y":0.0 }, "solution_refs" : [] }, { "coordinates" : { "x":1.0, "y":0.0 }, "solution_refs" : [] }, { "coordinates" : { "x":2.0, "y":0.0 }, "solution_refs" : [] }, { "coordinates" : { "x":3.0, "y":0.0 }, "solution_refs" : [] }, { "coordinates" : { "x":4.0, "y":0.0 }, "solution_refs" : [] }, { "coordinates" : { "x":5.0, "y":0.0 }, "solution_refs" : [] }, { "coordinates" : { "x":6.0, "y":0.0 }, "solution_refs" : [ "5" ] }, : : } ], "anchors" : [ { "name" : "price", "position" : { "x":0.0, "y":0.0 } }, { "name" : "battery", "position" : { "x":4.5, "y":7.8 } }, { "name" : "weight", "position" : { "x":9.0, "y":0.0 } } ], : : } } }
結果の JSON の細かい内容は以下のリファレンスを参照していただきたいのですが、大きく3つの箇所を参照することになります。 1つ目は "problem" で、この中にポストした JSON がそのまま記述されているはずです。つまり「この問題に対する実行結果である」ことを示しています。
2つ目は "resolutions" の中の "map" で、ここに散布図を書いた時の各点の座標(x,y)が示されており、またその座標位置に相当するアイテムがあった場合は "solutions_refs" という配列値で示されます。例えば上の例ですと ( 6.0, 0.0 ) の位置に "key" 値が "5" に相当するアイテムがある、ということになります。
最後の3つ目は "resolutions" の中の "anchors" で、これが指定した各トレードオフ要素(この例では価格とバッテリー容量と重量)が散布図上のどの位置にあるかを示しています。
後はこの結果を受け取った側でどのように見せるか、という問題になります。チャート描画の API を使ってもいいし、Canvas を使って自分で記述してもいいと思います。ここから先は開発者やデザイナーの腕の見せ所と言えます。そういう意味ではここのデモサイトはなかなか良くできてますよね。
というわけで、これまでにこのブログで紹介してきたコグニティブサービスとは少し(特に実行方法の面で)毛色が違うサービスと言えます。API 実行時に指定フォーマットの JSON を作る必要があるのが少し面倒ですが、トレードオフを意識する要素と、それらの値は大きい方が嬉しいのか小さい方が嬉しいのかの情報、そしてアイテムの一覧を JSON にしてポストすれば結果が返ってくる、というものです。REST API そのものはシンプルなのでエクセルのような表計算からも実行できると思っています(エクセルだと逆に結果の視覚化が難しいかも・・)。
なお、ここで紹介した Watson Tradeoff Analytics API について、詳しくは API リファレンスを参照してください:
http://www.ibm.com/smarterplanet/us/en/ibmwatson/developercloud/apis/#!/tradeoff-analytics